第三章
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「大丈夫か」
「そうなのね、じゃあ」
「ああ、小太郎と仲良くな」
兄は妹だけでなく小太郎も見て話した。
小太郎は実際にかなり賢く家族の言うことはよく聞き素直で一度言われたことは忘れずしっかりと守った。
散歩の時も引っ張ることはせずリードを持っている若菜に動きを合わせた。至って平和で大人しい犬であり。
かつ家に誰かが来るとすぐに吠えて家族に知らせた、父はそんな小太郎を見て県内の犬のコンテストに彼を出してみた。すると。
小太郎は見事優勝した、毛並みや外見もしっかりしているだけでなくその賢さと性格の良さが決め手になった。
それでだ、若菜は小太郎を抱いて笑顔で話した。
「よかったね、小太郎」
「ワン」
小太郎は自分の首を抱く若菜に笑顔で応えた、父もその小太郎を見て言う。
「凄いな、まさか優勝するなんてな」
「小太郎がそれだけ凄いってことだよね」
「ああ、本当に立派な奴だ」
父も小太郎を見て笑顔で言う、そしてだった。
小太郎は村でも有名な犬になった、誰もが彼をいい犬だと話した。だがその小太郎を見て元の飼い主が。
鈴木家に押し掛けてきてこう言った。
「おい、あの犬はな」
「何だっていうんだ」
「元々うちの犬やぞ」
そのチンピラを思わせる悪い目で父に言った。
「そやからな」
「返せっていうのか」
「そや」
猿を睨んだ感じにさせた顔での言葉だ。
「元々俺が飼ってたやろ」
「おい、お前捨てただろ」
父は彼にこう返した。
「蹴って」
「そんな話知るか」
元の飼い主はあくまで引き下がらない、だが魂胆は明かだった。父は家で家族に言った。
「小太郎がコンテストで優勝したからな」
「自分の犬にしたいのね」
「ああ、あいつらしいな」
「本当にそうね」
妻は夫の言葉に顔を顰めさせて頷いた。
「相変わらずね」
「そんな理屈通じるか」
「そうよね」
「ああ、しかしな」
「それでもよね」
「あいつは欲が深いからな」
そうした輩だからだというのだ。
「諦めないぞ」
「そうよね」
「だからな」
「ずっと言い続けるわね」
「そうだ、これはどうするか」
家族で悩んでいるとだった、通称歳さんという村の駐在所の警官が元の飼い主を引っ張って行った。それは何故かというと。
「人参とかトマトをです」
「そういえば」
「最近村の畑から野菜がなくなっていたな」
「全部あいつの仕業だったか」
「そうだったんだな」
「はい、現場を見まして」
歳さん本名を山崎俊三という角刈りで引き締まった顔立ちと体格の長身の制服姿の警官が村人達に話す。
「それで、です」
「しょっぴいたんですね」
「そうしたんですね」
「はい、現行犯ですから」
だからだというのだ。
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