後編
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その夜、俺はみんなと一緒に、タルタロスと呼ばれている塔へ向かった。
寮を出るとき、俺は首輪にリードを付けられてしまった。
俺は嫌がったのだが、
「お前は今、どう見ても犬なんだから、散歩のときにリードをつけるのはマナーなわけよ。誰に見られるかもわからないんだから我慢しろ。」
と伊織に言われて、あきらめて紐で繋がれるしかなかった。
しかし、小学生の天田に引かれて歩いていると、情けなさが半端じゃない。
しかも追い打ちをかけるように、伊織が「リードで引かれて歩かされてるってどんな感じだ?」とか「桐条先輩とかに引いて欲しいんじゃないか?」とかひたすら茶々を入れてくる。
悔しいが犬だから言い返すこともできない。でもまあ、そのあと伊織は岳羽さんに「馬鹿なこと言ってんじゃない!」ときつく怒られてたから、いいんだけどね。そのガッカリっぷりには俺も負けるよ。
そして深夜0時。
話に聞いた通り、全ての照明が消え、人間は皆、棺に姿を変える。
ここのメンバーは全員が影時間に適性がある希少な能力者だということだ。俺も棺に変化するようなことはなかったが、影時間に適性があるのか、それともコロマルの体にいるせいだろうか。
やがてその異常な光景をの中、タルタロスにたどり着いた。天まで届くその塔を見上げて俺は驚愕した。尋常ではない非現実感だった。こんなものが影時間にだけ存在するなんて、とても信じることができない。
一同に連れられて、塔のエントランスホールに入る。
俺の知っているテレビの中の世界が、現実にあふれ出したような奇妙な光景の場所。
俺は絶句したまま、周りを見回した。
「昨夜、コロマルが攻撃を受けて気を失ったフロアから再度探索してみましょう。」
リーダーと呼ばれている、前髪を長く垂らした男が言った。
探索メンバーはそのリーダーと、犬語通訳のできるアイギス、そして荒垣と俺だ。
他はバックアップとして、いざというときに備えて待機するのがルールらしい。
俺はアイギスさんから短剣を渡された。普段、俺が戦闘で使っている武器に似ていたが、コロマルはこれを口にくわえて戦っていたのだという。
『忍犬かよ!』
俺はツッコミを入れたが、誰も理解してくれる人がいなくて寂しい空気が流れた。
正直、犬として初心者の俺が、これを咥えて戦うなどというそんな器用なことはとてもできそうにない。
俺がそれをアイギスさんに伝えると、
「それなら俺も一緒に行こう。コロマルは戦わずに後からついて来ればいいさ。」と真田が名乗りを上げた。
メンバーが決まった後、転送ポイントを利用して迷宮に入る。
攻略済みの迷宮のポイントに飛べる仕組みらしい。いよいよ探索の開始だ。
それはテレビの中で探索する俺たちの雰囲気によく似ていた。
山岸さんのナビに従い、徘徊するシャドウをかわしながら慎重に
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