前編
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たり前か。どれくらい食ってないんだろう。少なくとも今日はまだ何も食ってないよな・・・。)
考えているうちになんだか尿意まで、もよおしてきた。しばらくトイレにも行っていないようだ。しかし人間用のトイレには入れないし、かといってその辺の壁に片足をあげておしっこする気にもなれない。後で誰かに怒られそうだし、なにより情けない。
とりあえずそれ以上、建物の探索はあきらめて、1階に戻ることにした。
しかし階段を降りようとして、
(うわっ、こわっ!)
足がすくんだ。四つん這いの前傾姿勢で階段を降りるのはかなり怖い。
結局、カニの横歩きのような無様な姿勢で、恐る恐る降りていく。時間をかけて2階フロアまでなんとか降りて一休みした後、さらに1階への階段に挑戦した。
半ばまで下りてきて、フロアまであと少しと・・・思ったところで、いきなり足を踏み外した。
(うわっ!!!)
俺は階段をコロコロと転がり落ち、床に体を打ち付けて「キャイン!」と悲鳴を上げた。
しばらく痛みにもだえ苦しむ。
泣きたい気持ちで起き上がろうとしていると
「コロマルさん、大丈夫ですか?」と声をかけられた。
声のした方を見ると、そこには金髪の美少女がいた。
(そういえばさっきも「大丈夫か」って聞かれたな。)と思いながらも、少女の姿に目を奪われる。
白いレオタードのような服、首元に大きなリボン、両肩に金属の肩パット。何かのコスプレなのだろうか・・・?。
(ここが何かの寮だとして・・・いるのが小学生と金髪のコスプレ美少女って、なんの寮だかさっぱりわかんねえよ。)
普段なら、軽い調子で話しかけたくなるような女の子だったが・・・こちらは犬。
(犬のナンパはありえねーよな。)
再びため息をつき、すごすごと痛む体をひきずって歩きだした。
元いた場所に戻ると、目の前にドックフードの入った皿と、水の入った器が置いてある。それを見つめているうちに、さらに情けなくなってきた。いくら空腹でも、これに手をつける気にはなれない。
『ああ、はらへったなー。』思わず声が漏れる。
「食べないのですか?」
後をついてきた金髪美少女が、不思議そうに聞いてきた。
『さすがにドッグフードは食えねえよ。』と嘆く。
「なぜ食べられないのですか? 昨日は普通に食べていたようでしたが?」
少女が重ねて聞いてきた。
『昨日は食べていた? ・・・ってことは昨日は犬だったんだ。』と俺は返した。
(俺がこの体に入る前からこの犬はいた。・・・ってことは、もともと犬だった体に、死んだ俺の魂が入り込んだんだろうか?)
こちらが考え込んでいる間、少女は沈黙したまま、まじまじと俺のことを観察している。
そして「今も犬であります。」と結論を出すように言った。
『いや、まあ、そりゃそうだけど・・・そういうことじゃなくて・・
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