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戦国異伝供書
第八十五話 四万十川の戦いその六

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 彼等を都に丁重に送りそうして彼等が去ってから彼は高知城を築かせることを命じたがその後でだった。
 元親はここでだ、家臣や弟達に話した。
「都どころか、か」
「はい、摂津に河内に和泉にです」
「大和、伊賀に丹波、丹後にです」
「それに播磨もです」
「そうした国々まで手中に収めるとはな」
 元親は唸って言った。
「まさかな」
「あっという間にですな」
「上洛をされて」
「そして都どころか」
「そうした国々まで手中に収められるとは」
「物凄いことですな」
「織田殿は違うな」
 まさにとだ、元親は信長のことについて話した。
「天下人の器じゃな」
「全くですな」
「あの御仁はですな」
「物凄いことですな」
「これでわしは決めた」 
 元親はこうも言った。
「上洛はせぬ」
「先を越されましたな」
「しかも織田家の兵は最早十万を越えております」
「それではですな」
「相手になりませぬな」
「そうじゃ、わしではとても相手にならぬ。だからな」 
 それでと言うのだった。
「上洛はせず四国の統一を目指そう」
「土佐は統一しましたし」
「それではですな」
「そこから阿波や讃岐を手中に収め」
「そうしてですな」
「伊予もですな」
「手中に収めてな」
 そしてというのだ。
「それでよしとしよう」
「兄上はですな」
 ここで親貞が言ってきた。
「それでよいですな」
「よいというか器を覚った」
「兄上ご自身の」
「だからな」
 それでというのだ。
「上洛は諦める、だが」
「それでもですか」
「今のところはな、しかしな」
「機会があればですか」
「織田家に隙があれば」
 その時はというのだ。
「上洛をするぞ」
「そうされますか」
「うむ、さしあたってはな」
「四国をですな」
「統一してな」
 そうしてというのだ。
「わしの次の目的を果たそう、しかし織田家が四国に来るなら」
「その時はですな」
「戦う」
 そうするというのだ。
「必ずな」
「降らずに」
「一戦も交えずして降るのはな」
 それはというのだ。
「わしもじゃ」
「されませぬな」
「わしも意地がある」
 だからだというのだ。
「それはせぬ」
「ではその時は」
「お主達もか」
「兄上がそうされるなら」
 それならというのだ。
「必ず」
「我等もです」
「我等もそうします」
「殿と共にです」
「織田家と戦います」
「しかし織田家と戦えば」
 最早天下人と言っていいこの家と、というのだ。
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