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戦国異伝供書
第八十五話 四万十川の戦いその四

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「大したことはない」
「確かに置かれてはいない」
「それはいい加減なものですか」
「そうなのですか」
「多く置かれていては川の流れにも影響が出る」
 元親は川を見つつ話した。
「堤の様になってな」
「確かに、木等が川に多くありますと」
「それで流れが変わりますな」
「その木達が堤の様になり」
「そうなりますな」
「しかしそれがない」
 今の四万十川はというのだ。
「普通の流れじゃな」
「いつもと変わらぬ」
「そうしたものですな」
「確かに」
「よく見ますと」
「川を渡るについてもじゃ」
 乱杭等があるのは確かにしてもというのだ。
「何ということはない、だからな」
「渡りますか」
「敵の乱れが確かになれば」
「その時は」
「そうする、敵は戸惑いじゃ」
 今度はまた敵軍を見る、先程よりも乱れている。
 元親はその敵軍を見てさらに言うのだった。
「北に向かわせた隊にどうしようかとな」
「動こうかどうかですな」
「迷っていますな」
「動こうとする者もいれば」
「我等に備えようとする者もいる」
「意見が分かれ」
「そして余計に乱れておる」
 まさにというのだ。
「だからな」
「それではですな」
「これからですな」
「敵がさらに乱れれば」
「その時はですな」
「うむ、川を渡るぞ」
 こう言って、そしてだった。
 元親は戸惑い迷いそこから乱れていく向こう岸の軍勢を見ていた、そしてだった。
 艇の乱れが最高潮に達したところで命じた。
「行くぞ」
「今よりですか」
「川を渡りますか」
「そうしますか」
「そしてですか」
「敵の軍勢を攻めるぞ、よいな」
 こう言ってだった、そのうえで。
 元親は自らも川に入りそうして軍勢に川を渡らせた、すると。
 川の中には確かに乱杭や逆茂木があった、だが。
 そうしたものは少なく造りも雑だった、それで長曾我部家の者達は特にこれといって困らずだった。
 彼等はむしろ驚いてこう言った。
「雑な造りじゃな」
「乱杭も逆茂木も」
「これといってな」
「どうということはないな」
「しかもな」
「数もな」
 そうしたものの数もだ。
「これといってな」
「少ないな」
「そうじゃな」
「これではな」
「何ということはないわ」
「川を渡れるわ」
「楽にな」
 こう言ってだ、そしてだった。
 彼等は何もなく川を渡った、それで。
 一条家の軍勢に向かった、すると。
 彼等は総崩れになった、槍を突き出し弓矢を放つとだった。
 さらに崩れた、それで元親も言った。
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