三十五 かわき
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ていた。
そして、長年の願いを口にする。
「…時期尚早かと思っていたけど…もう我慢できないわ…」
ねっとりとした声音が、室内に這うように響く。
サスケの部屋の扉の隙間。
そこに長く細い指を這わせて、大蛇丸は囁いた。
「さぁ…サスケくん…」
数多の蛇がサスケを取り巻く。
逃げ場を逃すように殺到した蛇の主は、恍惚とした笑みを湛えた。
「────君の身体を私にちょうだい」
いつからだろうか。
最初はただ純粋に、亡くなった両親に会いたい一心だった。
ただ、それだけであったはずなのに。
ガラガラ、とアジトが瓦解する音が響く。
暗く、澱んだ空気にあった其処は、今や外気に曝されていた。
その巨躯で地下にあった大蛇丸のアジトを突き破る。
太陽の光が射し込むかつてのアジトの成れの果ての中、春野サクラが口寄せした巨大な猫が、ぐるる…と喉を震わせた。
「まさか…サクラちゃんが【口寄せの術】を使うなんて…」
「いつまでも昔の私と思わないことね」
驚愕で青い瞳を大きく見開くナルと、サクラは冷ややかに見下ろす。
巨大な猫の背に乗ったサクラを警戒態勢で見上げていたヤマトは、ピクッと反応した。
直後、かぶりを振る。
(そんなバカな……ありえない)
だって、既に彼は────彼らは死んでいる。
木分身の応用術である【送信木】。
細胞を種子に変化させ、敵の服や靴等に仕込むことで追跡のマーカーとして扱える。
一見、ただの種に見えるソレは、ヤマトのチャクラとだけ共鳴する忍具である。
簡単に言うと追跡用の発信機だ。
温泉宿で泊まった際、ダンゾウ率いる『根』から派遣された忍びということで、ヤマトは対象の服に、【送信木】の種を仕込んでおいた。
しかしながら、念のためにと仕込んでおいたソレが、早々に使い物にならなくなったのだ。
理由は至極簡単。対象が死んだからだ。
遺体は動かない。死んだ相手の服に【送信木】を仕込んでおいても意味はない。
裏切者としてカブトに殺された右近/左近・鬼童丸。
死んだ彼らに仕込んだ【送信木】が反応したことを、ヤマトは気のせいだと思い、目の前の戦闘に集中した。
木々はなぎ倒され、地面が抉れたように穿たれている荒地。
荒涼としたその場は、ほんの少し前までは緑豊かな森だった。
クレーターと化した其処へ、音もなく降り立った彼は、周囲を見渡す。
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