三十五 かわき
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いつからだろうか。
最初はただ純粋に、亡くなった両親に会いたい一心だった。
いつから違えてしまったのか。
再生と幸運の象徴の蛇に憧れただけ。ただ、それだけだった。
いつから間違えてしまったのか。
幾度もの死を経験して、度重なる死を目の当たりにして。
だからこそ、強さを求めた。不老不死を望んだ。
全てを手に入れる、その為に。
いつから…────。
「なんだろう、これ」
陽光に透ける透明なソレ。
見たこともないソレを手に乗せ、問う教え子に、若き猿飛ヒルゼンは「おお。よく見つけたな」と感心の吐息を零した。
「それは白蛇の脱皮した皮だ」
「はじめてみた…」
両親の墓の前で拾った蛇の抜け殻を、幼い大蛇丸はマジマジと眺める。
滅多に見ることのできない珍しいモノだと説明するヒルゼンに、大蛇丸は無垢な瞳で「どうして白いの?」と訊ねた。
「さぁな…」と首を傾げたヒルゼンは「ただ…」と顎を撫でさすって言葉を続ける。
「昔から白蛇は幸運と再生の象徴とされておるぞ」
師の話を耳にして、大蛇丸は手の内にある白蛇の抜け殻を指でなぞった。
中身はとうに無いのに、透明で陽光に鱗が透ける蛇の皮は、大蛇丸にとっては、どこか神秘的なモノに見えた。
「此処で見つけたのも何かの因縁じゃな」
大蛇丸の両親の墓に、ヒルゼンはチラリと視線を投げる。
そうして、明るい物言いで「お前の両親もどこかで生まれ変わっているかもしれんのう」と何の気もなく笑った。
「いつかまた…大きくなったお前と会う為に」
俯いて、手の内の蛇の抜け殻に視線を落としていた大蛇丸は、そこで顔を上げる。
師を見上げるその双眸には、微かな期待の色が宿っていた。
「それって…いつだろう」
「さてなァ…」
ヒルゼンの言葉を聞きながら、大蛇丸は再び視線を手の内に落とす。
風でカサカサと音を立てる白蛇の皮。
幸運と再生の象徴である蛇の抜け殻を見つめる大蛇丸の口許は、確かにその時、緩んでいた。
再生の象徴である蛇のように、亡くなった両親もどこかで生まれ変わっているかもしれない。
そう期待に瞳を輝かせる幼き大蛇丸は、その頃は確かに、純粋な想いを抱いていた。
どこかで生まれ変わった両親へ会いたいという、ただ、それだけの無垢な願いだった。
幼少の頃より忍の才は抜きん出ていた大蛇丸はいつしか、自来也・綱手と共に『伝説の三忍』と呼ばれるほどの強さを手に入れていた。
けれども度重なる戦争の最中、人の死を何度も経験し、人は脆い、と達観する。
だから
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