第13節「大野兄弟とザババの少女」
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途中の会社員。朝のセールに向かっていた主婦に、店を開け始めていた店員達。
人々は皆一様に悲鳴を上げ、迫り来る災害から逃げ延びようと走り続ける。
平穏な朝は一転し、恐怖が街に広がって行く。
その雑踏の中、シェルターへと向かう雑踏を逆走する二人の少年がいた。
「早く逃げるんだッ!」
「ほら、行ってッ!」
人々を避難誘導したり、転んだ少女を立ち上がらせたりと、逃げ遅れる人が一人でも出ないように動いている少年達は、どちらも紫髪で金色の瞳をしている。
翔や純のクラスメイトである、大野飛鳥と大野流星、双子の兄弟だ。
「兄さん、そっちは?」
「今ので最後だ。……そろそろ潮時か」
二人の視線の先には、こちらへと向かって来るノイズの群れが見え始めていた。
「後は翔達に任せよう」
「そうだね。……ッ!? 兄さん、あそこ!」
「え?」
流星の指さす方向、そこには──
「あ、ああ、あ……」
逃げ遅れたリディアンの生徒が、腰を抜かして後ずさっていた。
ノイズはすぐそこまで来ている。
しかし、ここで彼女を見逃すわけにはいかない。
困っている人を見過ごすなど、UFZの理念に反する真似が出来るほど、臆病な二人ではないのだ。
「大丈夫か!?」
「肩借りるかい? ほら、立って!」
「ひ、ひいぃ……!」
「ッ! まずい……ッ!」
女子生徒と流星を突き飛ばし、自分も道路に身を投げる。
そのすぐ側を、身を捩らせたノイズが掠めて行った。
「兄さんッ!」
「くッ……流星! お前はその子を連れて先に逃げろ!」
「ッ!? 兄さんは!?」
「僕が囮になって、ノイズを引きつける! この辺りの道は熟知してるから心配するな!」
「馬鹿な事言わないでよ! そんな危険な真似、兄さんにさせられない!」
「僕だって流星にそんな真似、任せられないさ!!」
言い合っている間にも、ノイズは迫ってくる。
兄弟は決断を迫られていた。
「その子を連れて逃げろ、流星ッ!」
「兄さん……ッ!」
立ち上がった飛鳥が、囮となって走り出そうとしたその時──
「やいノイズッ! こっちへ来るデスッ!」
反対側の道路から、少女の声がした。
「……そこの人、早く逃げてッ!」
「え……」
「いいから逃げるデスッ!」
語尾の特徴的な金髪の少女に、黒髪ツインテールの無口そうな少女。
二人がノイズの方へと空き缶を投げつけ、注意を逸らそうとしていた。
「兄さん……行こうッ!」
「し、しかし……!」
「あの子達にだって考えがあるはず。その勇気を無碍にできるの?」
「ッ……!」
流星の言い分は尤もだ。
今、優先すべきはリディアンの生徒と共に逃げる事だ。
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