第13節「大野兄弟とザババの少女」
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その日の正午、弦十郎は了子の現場復帰について話を通す事を兼ね、斯波田事務次官と現在揃っている情報の確認を行っていた。
「──では、自らをフィーネと名乗ったテロ組織は、米国政府に所属していた科学者達によって構成されていると?」
『正しくは米国連邦聖遺物研究機関、F.I.S.の一部職員が統率を離れ暴走した集団という事らしい』
ちょうど昼食時に通信を入れた為、今日も斯波田事務次官は蕎麦を啜りながらの対応だ。
ちなみに前回はざる蕎麦。今回食べているのはかけ蕎麦である。
『こいつはあくまでも噂だが、F.I.S.ってのは日本政府による情報開示以前より、存在しているとの事だ』
「翔くんが聞いていた通り、米国と通謀していた彼女が……フィーネが由来となる研究機関というわけですか」
『出自がそんなだからな。連中が組織にフィーネの名を冠する道理もあるのかもしれん』
ここで一口、蕎麦を啜る。大事な話をしながら飯テロしてくるので、弦十郎や緒川はともかく、藤尭が蕎麦を啜る音だけで腹の虫を鳴かせているのは内緒である。
『テロ組織の名に似つかわしくないこれまでの行動も……存外周到に仕組まれているのかもしれないな』
「ううむ……」
斯波田事務次官は器に残った蕎麦を啜ると、汁を飲み干して箸を置く。
『まあ、その辺も櫻井女史が戻れば分かるだろうな。こっちでどうにか話は通しといてやる。数日はかかるが、必ず復帰させてやるさ』
「恩に着ます。了子くんをどうか、自由にしてやってください」
『おう。お前もあんまり無茶すんじゃねぇぞ』
そう言って斯波田事務次官は通信を切った。
彼がやると言ったのだ。後は任せて、自分達に出来る事に専念すべきだろう。
弦十郎が席を立とうとした、その時だった。
「司令、官房からも通信が入っています」
「官房?」
回線が開かれ、モニターに映し出されたのは、黒髪を後ろで結び、胸元にループタイを巻いた男。
男は弦十郎の顔を見るなり、開口一番に叫んだ。
『弦! ノーチラスが損傷を負ったというのは本当か!?』
「九皐兄貴!?」
風鳴九皐。弦十郎の兄であり、翼の父である八紘の弟。内閣官房次長を務め、二課に仮設本部として次世代型潜水艦『ノーチラス』を与えた張本人である。
「九皐さん、報告した通り、損傷はそれほど酷くはありませんので……」
『分かっているさ、慎次くん。しかしだな……自分で名付けた艦が、あわや潜航不能になるところだったと聞かされては、居ても経ってもいられなくてな……』
「すまない、九皐兄貴……」
『いや、相手もシンフォギアだったというのなら仕方ない。お前や部下が無事だった事を喜ぼう』
そう言って九皐は椅子にかけ直し、咳払いした。
「それで、
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