第三章
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「お水も飲んでくれてるし」
「そこは安心していいか」
「ええ、しかも全部残さないから」
ご飯も水もというのだ。
「生きていられるから。後は私達が優しく接していけばね」
「懐いてくれるか」
「きっとそうなるから」
だからだとだ、妻は夫に話した。
「根気強くね」
「一緒にいていくか」
「そうしていきましょう」
「そうするか」
夫は妻の言葉に頷いた、そうしてだった。
二人はベンに優しく接し続けていった、すると僅かながら。
ベンは二人を怖がらなくなってそうしてだった。
少しずつでも慣れていってだった、半年程すると。
ベンは家族にすっかり懐き近所の人や犬達ともだった。
普通に接することが出来る様になった、あの怯えきっていた様子はなくなっていた。すっかり人懐っこく優しい犬になっていた。
そのベンを見て妻は夫に微笑んで話した。
「やっぱり根気強く優しく接しているとね」
「わかってくれるな」
「それで打ち解けてね」
そうしてというのだ。
「懐いてくれるわね」
「あれだけ怯えている子でもな」
「やっぱり誠意を以てずっと接していたら」
「わかってくれるな」
「そうよ、ただね」
ここで妻はこうも言った。
「ベン太ったわね」
「ああ、毎日ご飯を沢山あげてな」
「いつも全部食べてるから」
それでというのだ、実は朝にあげる分には二人が仕事に行く時は昼の分もあげている。そして夜もなのだ。
「だからね」
「やっぱり太るな」
「ここに来た時は可哀想な位痩せていたけれど」
虐待されきっていてご飯も与えられていなかったことは明らかだった。
「それでもね」
「半年間ずっとお腹一杯食べていたからな」
「太ったわね」
「そうだな、けれどな」
「それでもよね」
「心配になる位痩せているよりも太っていた方がいい」
夫は真剣な顔で言った。
「それよりもな」
「そうよね、だからベンもね」
「太っている今の方がな」
「ずっといいわね」
「ああ、本当にな」
こう言うのだった、そしてだった。
二人でベンを見た、今は部屋の中にいるベンはすっかり落ち着いていてそうして二人を信頼している目で見ていた。身体全体でふっくらとしていて毛並みもすっかりよくなっていた。そのベンを見て二人は自然と笑顔になった。
痩せていたが 完
2020・4・26
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