第96話 糾弾
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のです」
風が声高に言いました。
「それは道義であって、軍令ではない。正宗様、違いますか?」
真悠は風に反論し、私の意見を求めました。
「そうだな……。だが、お前の意見は正論であるが、筋は通らない。私がもみ消したが、北郷は朝廷の使者を半殺しにした事実は変わらない。その使者が悪徳官吏であることを差し引いても、許されることではない。違うか?」
私は冷静な表情で真悠を見つめました。
「正宗様の仰る通りです。真悠殿、もう少し自分の仕出かしたことを反省してはどうです」
風は私の意見に同調して言いました。
「わかりました。その罪はこの私一人で被ります」
真悠は私と目を反らさず言いました。
「なっ!」
風が真悠の発言に言葉を失いました。
「この一件は正宗様と風殿しか知らないのでしょう」
「何故、お前が全て罪を被る必要がある」
真悠は風に罪の範囲を確認した上で、罪状があまり重くないと踏んでいるのでしょう。
彼女が揚羽を庇う理由はよく分かりません。
彼女が揚羽を庇うつもりなら、揚羽の名を決して出そうとしなかったはずです。
「私一人が罰せられれば、揚羽姉上は今後自重なさります。ああ見えて、家族想いですから……。姉上は常に沈着冷静で、本来このような真似をしません。感情が先行するのは正宗様のことが発端だからです」
「揚羽様の罪を見逃しては筋が通らないでしょう」
風が真悠に言いました。
「正宗様と風殿が口裏を合わせればいいだけです。世の中、正しき事だけがまかり通る訳ではないでしょう。そう思うのは子供だけです。万事の為に小事を切り捨てることも肝要と思います」
「当事者のあなたが言う言葉ではないです」
風が真悠を批判しました。
「風、お前の意見が聞きたい」
「正宗様、揚羽様を特別扱いするべきではありません。今後、このことが露見する方が問題です。揚羽様には折りを見て、汚名を注ぐ場をお与えなさればいいのです」
風は真剣な表情で私を見て言いました。
「真悠、お前を賊の逃亡幇助の罪で棒叩き50回の罰を言い渡す。揚羽への罰は改めて言い渡す。罪の執行は城に戻ってからだ」
私は真悠を真っ直ぐ見て言いました。
「正宗様、ご賢明な判断です」
風は私を見て言いました。
「わかりました。謹んで罰を受けます」
真悠は私の裁決が下ると、表情を変えずに拱手をして応えました。
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