第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第12話 背伸びの後に
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「う……ん……」
勇美は眠りの世界から徐々に覚醒していった。
そして違和感に気付く。
「あれ……ここどこ?」
寝ぼけ眼で勇美は呟く。14歳のまだあどけない少女が夢現を彷徨いながら戸惑う姿は愛らしい。
だんだん覚醒していく勇美の意識。そこは今まで幻想郷で長い間過ごして見慣れた人里の自分の家の部屋でもなく、ましてや最近自分の新しい住処となった永遠亭の優雅な自室でもなかったのだ。
「気が付いたかい?」
そして、自分の住処では聞き慣れない声が掛かるという『お約束』のシチュエーションが発生するのであった。
だが、勇美はだんだん今の状況を思い起こしていった。
まず自分は今日、いつものように竹林で依姫と共に鍛錬に励んでいたのだ。
そこにもんぺとサスペンダーという二律背反もいい所な組み合わせの出で立ちの少女と出会ったのだ。
そして彼女は何と輝夜と殺し合いをしに来たというとんでもない発言をした。
そんな事させないと勇美は意気込んで彼女──藤原妹紅に、自分が勝ったら引き下がってもらうために弾幕ごっこを挑んだのだった。
そして彼女との激しい戦いの末に、勇美は勝ったが彼女自身も倒れて……そこから記憶がないのである。
つまり、その情報から導き出される答えは……。
「あなたは妹紅さんで、ここは妹紅さんのお家ですか?」
「うん、だいぶ意識がはっきりしてきたようだね、感心感心」
妹紅ははにかみながら勇美に言った。
「え、それって何かまずいような……」
勇美は少し冷や汗をかくような心持ちとなった。何故なら。
「輝夜様を殺そうとしていた人のお家でお世話になるなんて……」
それが勇美が抱いた懸念だった。自分が住む場所の主にとって大敵な者の施しを受けるのは条理的に問題があると彼女は感じるのだった。
「すぐに私を帰らせて下……」
そう言いかけて勇美の体からゴムを締め上げるような音が、本人の意思を無視して奏でられてしまったのだった。
「あれだけお互い激しい戦いをしたんだ、無理はいけないよ。第一あんたの可愛い腹の虫さんのご要望にも応えてあげないとね」
先程から何かいい匂いがするのがその引き金となったのだ。
壮絶な戦いの後眠りに落ちて、その後の疲弊した体に空きっ腹の所にこれは、生き物なら誰も逆らえるものではないだろう。
「反則ですよ、妹紅さん……」
弾幕勝負には勝ったのに、駆け引きでは完全に負けた。そんな清々しい敗北感を勇美は噛み締めるのだった。
「まあ、私の存在自体『反則』みたいなものだから、言われ慣れた言葉だよ」
「それってどういう事ですか?」
妹紅の含みのある言い回しに、勇美は首を傾げた。
それを妹紅は含み笑いを堪えながら言った。
「『綿月依姫』とか言ったっけ? あんたも意地が悪いねぇ……。そ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ