ターン25 熱血指導、大熱血
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味に力強い書体で描かれたTシャツの上から革ジャンという、あまり服装には無頓着な清明でさえ仮にも公共の試合を舐めとんのかおのれはと言いたくなるような兄ちゃん……おまけにその兄ちゃん、厳密にはプロですらない無名中の無名である。おかげで彼も入場用の口上のネタを探すのにえらく苦労したものだ。
「さあ、それでは!毎度恒例の選手紹介と洒落込みましょう!」
しかも糸巻から聞いた話によると、恐らくこの試合はどちらかが無事では済まないだろう。さりげなく左手に付けた腕輪の位置を調整し、いざという時にデュエルディスクとして展開しやすい位置に移動させておく。
「まずはこちらの方から参りましょう。唸る剛力、絶対的な男のロマン。『ワンショットキラー』、蛇ノ目龍作さんです!」
「……」
紹介を受けた陰気な方の男が、挨拶どころか会釈のひとつもせずに爬虫類じみた目であたりをねめまわす。その視線にどこか空恐ろしいものを感じながらも、続けてそれと相対する熱血シャツの男へと視線を移した。
「……続きまして、なんとこの方厳密にはプロデュエリストではございません。ですが、その位置にかつて最も近かった男。今はなきプロデュエリスト養成施設の名門、HEATデュエルコーポレーションは元主席……」
「ええい、そんなの昔の話だ、まどろっこしい!熱血の前に熱血あり、熱血の後に熱血あり!熱血指導隊長、夕顔燃!いざ尋常に、勝負しろ!」
「師匠!頑張ってくださーい!」
「応、任せておけ少女!先ほどのお前の熱血魂、この目でしかと見せてもらったぞ!」
せっかく探し出した口上の途中に割り込んで飛び出し、びしっと正面の蛇ノ目を勢いよく指さす夕顔。さらに背後からは糸巻の話をぶった切ってまで声援を送る八卦まで出てきて、この時点で清明もこれは収拾がつかないと完全に見切りをつけた。無理に司会を継続することを諦め、ひっそりと舞台の端の方へと引き下がる。
そしてツッコミ役がいなくなったことで、いよいよ夕顔の独壇場は止まらない。普段の彼ならばここからさらに暑(苦し)く燃え上がってその熱血っぷりをいかんなく発揮するところだが、この日ばかりは勝手が違っていた。限界まで手を伸ばしてまっすぐに指さしたポーズのまま、険しい顔で問い詰める。
「だが、お前!お前にはこの熱血指導の前に、ひとつどうしても確認しなくちゃならないことがある」
「ほう?」
短い言葉だが、人を小馬鹿にしたような調子。目の前の相手を見下していることを、隠そうともしない視線。ますますその表情を険しくしながらも、夕顔は事態の核心に踏み込んだ。
「朝顔さんを襲ったのは……いや、あの人だけじゃない。ロベルトさんを、青木さんを!それから確か、一本松とかいう奴も同じ手口らしいな。あのデュエリスト襲
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