第二章
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「うちにあの娘達がね」
「ラブを連れて来てからだな」
猫は姉が名付けた、腹のその模様からこの名前にした。
「そうしたらだな」
「すぐだったのよ」
「お袋が死んだ瞬間、その日にラブを飼おうと言ったな」
「そうだったでしょ」
「そうしたらか」
その邪魔者が死んだとだ、夫は言った。
「凄いな」
「ラブも運がいいわね」
「ああ、しかしお袋が死んでな」
一家の邪魔者、親戚中の嫌われ者がというのだ。
「ほっとしたよ」
「このままずっとうちにいたら」
「雛子と姫子の教育にも悪いしな、兄貴みたいになりそうでな」
「お義兄さんね」
「兄貴も酷いからな」
夫は自分の兄その長男の話もした。
「尊大で怠け者で恩知らずで器が小さくてケチで無神経で図々しくて他人の家に急に来て大飯平気で喰らって風呂入って寝て金貰ってお礼も言わずに帰るからな」
「雛子と姫子も来るなって言ってたけれどね」
「その兄貴みたいになりそうだったからな」
同居している祖母の影響でだ。
「だからな」
「お義母さんが亡くなってっていうのね」
「よかったよ、保険金も慰謝料もかなり入ったし」
金の面でもというのだ。
「それも撥ねたのがヤクザ屋さんだからな」
「誰も不幸にならないわね」
「ヤクザ屋さんが人撥ねて死なせてもな」
「ヤクザ屋さんだからね」
「別にいいしな」
「ええ、よかったわね」
「じゃあラブはな」
夫は猫の話もした。
「このままな」
「うちで飼うのね」
「そうしていこうな」
邪魔者の葬式が終わってから笑顔で話した、こうして一家はラブと暮らしはじめたが。
すぐに邪魔者が甘やかしていた長男そのもう一人の邪魔者が。
働かないで暮らしていて奥さんにも三行半を突き付けられて母親に甘やかされて暮らしていたがそれ以外にもヤミ金にも手を出していて。
祖母が死んだ直後に家賃も払えなくなりマンションを追い出されてだった。
ヤミ金に連れて行かれてタコ部屋に放り込まれた、そして借金を完済したと思ったら仕事の最後の日に現場の落盤事故で死んだ。
このことでもだ、夫は言った。
「いや、兄貴もな」
「亡くなったわね」
「兄貴もいられるとな」
それだけでというのだ。
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