第二章
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「帰って来ないわね」
「死んだからね」
「そうよね、けれどね」
「それでもよね」
「ホワイト毎日波止場にずっといて」
そうしてなのだ。
「海の方を見てるわ」
「どうしたものかだろうな」
父は飲みつつ苦い顔で言った。
「本当に」
「ホワイトもずっと引き摺ったままだとね」
「ホワイトにとってもよくない」
「どうしようかしら」
敦子も両親もどうしていいかわからなかった、ホワイトを見るといつも悲しい顔をしていてそうしてだった。
家の中ではじっとしていた、ご飯も水も口にするがそれでもだった。
元気のないままだった、そんな彼を見てだった。
敦子はどうしようかと考えていた、とにかくホワイトは朝から晩までずっと波止場で海を見るばかりだった。
それでだ、敦子は両親に言った。
「ホワイトの近くに写真ずっと置く?」
「二人の写真か」
「それをなのね」
「そうしたらね」
考える顔で言うのだった。
「ずっと一緒にいる様に思って」
「それでか」
「ずっと波止場にいなくなるのね」
「あのまま海を見てもね」
そうしていてもというのだ。
「それでもね」
「何にもならないな」
「二人は戻って来ないしな」
「それに大波が来たり海に落ちたら大変だから」
ホワイト自身がというのだ。
「だからね」
「ホワイトのところに写真を置いてか」
「そうしてなのね」
「それで私からね」
敦子はさらに言った。
「ホワイトにお話するわ」
「あの子にか」
「直接そうするの」
「もうお兄ちゃん達はいないって」
その様にというのだ。
「そうするわ」
「そうしてくれるか」
「ホワイトにお話するのね」
「死んだ人は戻らないからね」
敦子は笑って言った、だがその笑顔はというと。
寂しいものだった、その笑顔で言うのだった。
「どうしても」
「それはな」
父は娘のその言葉に沈痛な顔で頷いて応えた。
「絶対のことだな」
「そうよね、だからね」
「ホワイトにもか」
「もうお兄ちゃん達は帰って来ないことをね」
このことをというのだ。
「伝えるわ」
「そうしてくれるか」
「ええ、何度でもじっくりと話して」
そしてというのだ。
「わかってもらうわ」
「そうしてか」
「前向きになってもらうわ、あとね」
敦子はさらに話した。
「写真を見ればお兄ちゃん達には会える」
「生きてはいなくてもね」
今度は母が応えた。
「それでもよね」
「そう、そのこともホワイトにお話するわ」
「そうするのね」
「そうするわ」
「猫もそうしたことわかるかしら」
「絶対にわかるわ」
敦子は母に確信を以て答えた。
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