第三章
[8]前話
「何かあったらすぐにベッドや卓の下に隠れることはな」
「地震の時と一緒よね」
「そうだ、そうしたらな」
「安全よね」
「ビビは怖がりだからわかってるんだ」
何がわかっているかもだ、父は話した。
「どうしたらいいかな」
「そうなのね」
「だからな」
「何かあったらベッドや卓の下に入って」
「そうしてな」
そのうえでというのだ。
「安全な様にしているんだ」
「そうなのね」
「それで絶対に家族から離れないな」
「うん、雷の時もね」
美香はビビがそのベッドの下に隠れた時のことも話した。
「そうだったわ」
「絶対に家族の傍にいるな」
「怖い時も家族と一緒なのね」
「それだけ寂しがりでな」
父はさらに話した。
「家族が好きなんだ」
「家族が好きだから一緒にいるのね」
「寂しくても嫌いな人と一緒にいたくないだろ」
「ええ」
これは美香も同じだった、それなら一人でいたい位だ。
「そうよ」
「だからビビもなんだ」
「家族が好きだから」
「一緒にいたいんだ」
そうだというのだ。
「この娘もな」
「そうなのね」
「怖い時もな」
「安全な場所に逃げても」
「それでも家族の傍にいたいんだ」
好きな相手のところにというのだ。
「そうなんだよ」
「成程ね」
「だからな」
それでというのだ。
「皆でそのビビと一緒にいような」
「寂しい思いさせないのね」
「そうしていこうな、これからも」
「わかったわ」
美香は父の言葉に頷いた、その最近太ってきて腹が出て来たが優しい顔立ちの父に。
「そうしていくわね」
「嫌じゃないだろ」
「というかビビが一緒にいてくれたら」
それならとだ、娘は父に笑顔で話した。
「それでね」
「幸せだな」
「そんな気持ちよ」
「だったらな」
「うん、ビビこれからも一緒にいようね」
「ニャン」
ビビはここで卓の下から出て来た、そうしてだった。
美香の膝の上に来た、そのうえでゴロゴロと喉を鳴らして丸くなった。美香はその顔を撫でて笑顔になった。その笑顔は心から幸せの中にいる人のものだった。そして家族でビビと末永く幸せに過ごした。ビビは怖がりで寂しがりのままだったがいつも喉を鳴らし幸せそうに暮らした。
怖がりの猫 完
2020・4・24
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