第二章
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「皿も餌も用意してあるんだな」
「最初はねこまんまだったがな」
「今じゃちゃんとキャットフードなんだな」
「ああ、水もな」
言いつつ水を入れた皿も出した。
「やっている」
「まるで親父の飼い猫だな」
「馬鹿を言え、飼っているものか」
父は息子に怒って答えた。
「勝手に棲み付いてるだけだ」
「どうせなら飼わないか?」
「飼わん、追い払いもしないが」
それでもというのだ。
「別にだ」
「飼うつもりもないんだな」
「暇だから付き合ってるだけだ」
「そうか」
「そうだ、飯位食わせてやるが」
「飼うことはしないか」
「このままな」
こう息子に話した、猫が食べる姿を見ながら。
「そうしていく」
「成程な、ただな」
「ただ、何だ」
「この猫随分太ってるな」
息子はその猫を見つつ言った。
「腹がぼこって出てな」
「他のところでも餌を貰ってるんだろう」
父は素っ気なく返した。
「だからな」
「太ってるか」
「そうだろう、驚くことじゃない」
こう言うのだった。
「考えることでもない」
「素っ気ないな」
「野良猫だからな」
「それでか」
「そうだ、だからな」
「このままか」
「来たら餌位やる、軒下にもいたければ置いてやる」
そうしていくというのだ。
「それだけだ」
「そうか、じゃあ俺はもうな」
「帰るか」
「顔を見せに来ただけだからな」
それでとだ、息子は父に言った。
「これでな」
「美香子さんと雅之に宜しくな」
息子の妻と自分から見て孫のことも話した。
「何時でも来てくれとな」
「ああ、言っておくな」
息子は最後にこう言って自分の家に帰った、父は暫く猫を見ていたが猫は食べ終わると何処かに行った。彼はそれを見てやはり勝手な猫だと思った。
そんな中で台風が来た、あまりにも強い雨風だったので息子は台風が過ぎ去ってから父の家に行った。家が傷んでいないか見に来たのだ。
家はとりあえずは大丈夫そうだと一見して思った、だが。
父の部屋に入るとそこには。
「ニャア」
「ナーーオ」
「ニャン」
「ニイ」
「ニャンニャン」
「五匹小さいのがいるな」
「こいつが産んだ」
前に餌をやっていたかつては太っていたそのトラ猫を見つつだ、父は息子に話した。
「台風が来る前に縁側でやけに五月蠅くて障子を開けるとな」
「どうなったんだ?」
「部屋に入ってきた、台風から逃げる為かと思ったが」
「子供を産んだんだな」
「そうだ、台風が来た日にな」
まさにその日にというのだ。
「五匹もな」
「それはまたな」
「全く、太っていたと思ったら」
父は息子に苦い顔で話した。
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