魔女スッパリヨーゼの色香
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ムムムントが雇い入れた黒魔術師というのはだ。
エルフ娘がいうにはケッタパヨの森に潜む蛮族チャヒョの呪術師?いわゆる民間療法の無免許開業医だ。
名をバヒャという。チャヒョは女系家族であるが、その中でも特に権力中枢に近いスッパリョーゼという特権異能集団に属している。この階級はチャヒョの保守層にあって主流派とは一線を画すエリート集団であり、連綿と守られてきた因習のみならず西洋医学や近代科学の「美味しいとこ取り」をしてチャヒョ呪術のアップデートに励んでいるというのだ。
通常ならば、先祖代々が積み上げてきた知恵を否定する異端者として疎んじられるか、最悪の場合、一族から排除されるのが普通である。
ところが、スッパリョーゼは派閥力学の淘汰圧に打ち勝ってしぶとく生き延びるだけあって毛色が違った。
ケッタパヨの森は断崖絶壁にありながら、ぱぴろす港を見下ろす好位置にロケーションしていた。
その地政学が幸いしてチャヒョが港町と粗密ながら交流を図る機会に恵まれた。
スッパリョーゼは波止場で見聞きした会話から最新の交渉術などをちゃっかり学んでいた。それでチャヒョのお歴々を心理学研究や帝王学でばっちり懐柔し、否定的な意見や批判を解消していた。
そういうわけでスッパリョーゼは坐骨神経痛の作用機序など朝飯前だったのである。
ところで、パヒャという女は浪費家であった。豪華絢爛華美を是とするチャヒョの母集団は中産階級や労働階級に苛政を強いていたが、パヒャの実家はスッパリョーゼの下の下とはいえ、そこそこ豊かであった。幼少のみぎりから何の不自由もなくといえば御幣があるかもしれないが、そこそこの苦労を味わいつつ貧民からみれば順風満帆といえる十代を過ごした。そしてチャヒョは14歳で男も女も元服するが、パヒャも御多分に漏れず、いっぱしのスッパリョーゼ婦女としてチャヒョ社交界にデビューした。
しかしながらパヒャはどちらかというと内向的な性格で、宴席で夫の肩越しに目線合わせで政敵をけん制したり、色目づかいでパトロンを篭絡するなどという交渉術はからっきり苦手だった。それでパヒャはものの見事に婚期を逃した。スッパリョーゼは大多数のチャヒョと違って男を外部へ狩りに行かない。
男女比が極端にいびつな母系社会チャヒョは子孫?栄の機会確保に苦労している。男はあくまで遺伝子プールとしての存在価値しかなく、女児が生まれればもろ手を挙げて歓迎されるが、男児はごく少数の戦士として温存される以外は、間引きされてしまう。
そう、殺されるのだ。それも産声をあげる間もなくだ。パヒャのそういう優生学的な習慣についていけなかったというナイーブな面も結婚を躊躇させた一因かもしれない。
とまれ、いたずらに結婚をだらだらと遅らせ、適齢期を逃した彼女に母親はほとほと困り果てたものの、手をあげたり勘当するような事はしなかっ
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