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曇天に哭く修羅
第二部
困惑
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そんなところまで理解できる。

だから気に入らないのだ。

女剣士の像はとてもレックスが指示して動かしているとは思えないような動きで紫闇の出す攻撃を掠らせず、一方的に自分の攻撃を打ち込む。

何もかも読まれているのだろう。


(マジで魔術師としての差よりも人間としての差が有るから追い込まれてる気がする)


紫闇の予想通りではあるが。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


再び紫闇が吹き飛ぶ。

しかしこれは罠。

女剣士の像はレックスから大きく離れた紫闇の所まで向かってくる。


「上手くいったか」


紫闇はレックスに対して攻撃を仕掛ける為に、どうしてもレックスと人形の距離を引き離しておきたかったのだ。

先程までのレックスと女剣士の像は一定の間隔を維持しており、紫闇が【珀刹怖凍/びゃくせつふとう】以外のどんな行動を取ろうとも対応できるポジショニングだったので迂闊に仕掛けられない。

しかしこれだけ距離が有れば別。

レックスに攻撃が向かっても人形を呼び戻して間に合わせることが出来ないはず。

何かしら【異能】を使わない限り。

紫闇は女剣士の像による攻撃を盾梟で強引に受け止めると彼女を置き去りにしてレックスの方に全力疾走を開始。

がら空きのレックスに近付く。

だが追ってくる人形の動きは速い。

音隼無しでは追い抜かれそうだ。

そうすれば女剣士の像は紫闇とレックスの間に割り込むだろうことは明白。

しかしその心配は無い。

残り5メートル有るが既に届くのだ。

紫闇は何時もの【禍孔雀(かくじゃく)】と違い、拳だけでなく肘まで黄金に輝かせた。

攻撃するには体術しか手段が無いはずの紫闇はその場で真っ直ぐ拳を突き出す。

金色の光が腕から放たれる。

離れた光は巨大な拳を象った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「───ッ!?」


レックスの表情が一変。

初めて動揺する。


「今の俺が唯一使える遠当てだ」


【黒鋼流練氣術/三羽鳥ノ一/禍孔雀・かくじゃく/偽炎・ぎえん】

魔晄の粒子で形成された巨大な拳はレックスの全身を炎のように包み捕らう。

爆裂と粒子の飛散が起きるとレックスは結界に叩き付けられて吐血し倒れ込む。

ダウンを取られカウントが始まる。


(ここで終わる奴じゃない。レックスはまだ切り札が有るはずだ。けどそれはこちらも同じ。ここまでは準備運動に過ぎないんだから。しかし遅いな。何で動かねーんだ?)


『シックス!』

(いやいやいや)

『セブン!』

(おいちょっと待て、早く立てよ)

『エイト!』

「嘘だろレックスッ
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