第一章
[2]次話
残った者同士
泉信長と妻の直美は今は共に家の犬のベンの散歩に出ていた。ベンは黒のビーグル犬でこの種類の犬の中でもかなり大型である。
そのベンが不意にだ、公園の木陰の方に向かいました。ベンのリードを持っている夫はそれを見て言った。
「何だ、急に」
「公園の方に何かあるのかしら」
妻もそのベンを見て言った。
「若しかして」
「トイレだとな」
「ええ、その辺りでするし」
だからだとだ、妻は話した。見れば妻は小柄で背は一五〇位だ。黒のロングヘアに大きい目であり胸が厚着の上からも目立っている。夫は黒の七三分けであり穏やかな表情をしている。背は一七〇程で痩せた身体である。
その夫にだ、妻は話した。
「ならね」
「何かな」
「そっちにあるのね」
「じゃあ行ってみるか」
「人が倒れていたら問題だし」
「だったら」
夫も言ってだった。
ベンが向かうままそこに行ってみた、すると。
そこにはダンボールがあり中には。
小猫達がいた、皆背中は茶色で腹や足が白い。その子猫達が鳴いていた。夫はその猫達を見て言った。
「猫か」
「そうね、何かと思ったら」
「これは大変だな」
「捨て猫ね」
妻も夫に言った。
「ダンボールの中にいるし」
「このままだと餓え死にするかもな」
「それか保健所に連れて行かれるか」
「鴉に襲われるかも知れないぞ」
「だったらね」
「ああ、すぐにな」
「皆保護しましょう」
「保護してな」
そしてとだ、夫は妻にさらに話した。
「そしてな」
「その後はね」
「ああ、猫の里親を探すボランディアの団体もあるしな」
「そっちにも連絡して」
「里親探そうな」
「そうしてもらうべきね」
「ああ、じゃあな」
猫達は今のところ元気だ、だがどの猫もダンボールの中で怯えきっている。鳴いていたのも二人とベンを見て怯えきっているがそれでもだった。
そしてベンは猫と二人を交互に見ている、猫達を助けて欲しいという目だ、二人はそのベンも見て決めた。
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