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戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
戦姫絶唱シンフォギアG
第1楽章〜黒の装者達〜
第7節「S2CA」
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翼の隣を走り抜け、響の前にしゃがんだのは、先程まで純に肩を抱えられていた翔であった。

「どうした? 何があった!? 何処か痛むのか? まさか、俺の伴奏が不完全だったとか──」
「ううん……」

慌てる翔に、響は首をブンブンと横に振る。

「わたしのしてる事って、偽善なのかな……? うっ……」
「響……」

響の脳裏にフラッシュバックする、モノクロの記憶。

心無い言葉の書かれた紙が一面に貼られた家の玄関。

窓から差し込む温かい太陽の光さえ遮られる、形ある悪意。

泣き崩れる祖母。祖母に寄り添う母。

古傷を抉られたように、響の目からは止めどなく涙が溢れ出す。

「胸が痛くなる事だって、知ってるのに……ひっく……」



その泣き顔は、とても懐かしいものだった。

と言っても、それは全然穏やかな記憶ではなく、寧ろ俺にとっては忌むべき思い出。

響にとっては一生忘れる事が出来ない、深い傷跡。

この、声を噛み殺すような響の泣き方を、俺はよく知っている。

腸が煮えくり返るような怒りが湧き上がる。

誰だ、響を泣かせた奴は。

誰だ、彼女を苦しませるのは。

響から笑顔を奪ったのは……俺の太陽を曇らせたのは、何処の何奴だ!!

……だが、その怒りは一瞬にして収まる。

今、俺がすべき事を、心が、魂が訴えているからだ。

俺はもう、あの日の“僕”ではない。

溢れる涙が落ちる場所は──ここにあるのだから。

「うっ……うぅっ……ひっぐ……うう……」
「……響」

響の身体を抱き寄せ、その顔を胸に埋めさせる。

シャツが濡れるとか、知った事か。
響の涙を受け止めるのは、その恋人と認められし風鳴翔の責務だ。

「翔……くん……?」

響の背中と後頭部に回した腕に力がこもる。

怒り以上に心を占めた感情が、俺に自然とそうさせた。

口から出た言葉もまた、あの日から一日たりとも揺らいだ事は無い。

俺は、響のヒーローなのだから……。

「たとえ誰が否定しようとも、俺は響の味方だ」
「ッ……!」
「だから……思いっきり泣いていいぞ。痛みを堪える君の顔が、俺には何より辛いんだ」

その瞬間、響の腕が俺の背中に回され、痛いくらいに強く力を込められた。

「うっ……ぇぐっ……うわああああああぁぁぁん!! うぅ、ああ、わああああああぁぁぁぁん!!」

俺の胸に顔を押し付けて、子どものように声を上げて泣き喚く響を、俺はもう少しだけ力を込めて抱き締め、頭を撫でる。

何があったのか、聞けるのは泣き止んだ後でいい。

今はただ、こうしていたい。
彼女の心に寄り添い、抱き締める事だけが、今の俺に出来る最善なのだから……。

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