五十七匹目
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た光が散る。
「美しい………」
ぼそりとツェツィーリアの口から呟きが漏れる。
それは無意識の一言であった。
「差し上げましょうか? 刃を潰していない実戦用は3カートンほどありま……へにゅっ!?」
びすっ! とシラヌイの額にツェツィーリアのデコピンが刺さった。
「うゅーう?」
「自重しろ。頼むから。冗談抜きで」
「ゅー………僕だってそうそう表には出しませんよぅ」
シラヌイは記憶が戻って直ぐに、否、記憶が戻る前から純粋ダイアモンドのナイフを作るだけの魔力を有していた。
そして毎晩毎晩魔力を空にし、ダイアモンドを錬成し…。
それをもう一年以上続けているのだ。
魔力量は飛躍的に増え、ダイアモンドの錬成も効率化されていった。
その気になれば、ダイアモンドだけでできた大剣ですら作れよう。
そんな魔力量を空にするためにナイフや手裏剣を作っていては、三桁も越えるだろう。
「うゅぅ…女王陛下のお言葉なら聞くしかないな…。
今日からはダイアモンド以外のカーボン素材の量産しよ…」
ぼそぼそとシラヌイが呟く。
今度はアイテムボックスから一枚の黒い布を取り出した。
「これを作るのは構いませんよね?」
「これは?」
「布です」
「いや…だから」
「黒い布です」
「素材は…」
「そこら辺の木です」
「なら良し」
勿論シラヌイにはお約束のようなオチが用意されていた。
一週間ほど後、城にて。
「うん? なにをしているんだクーよ?」
「あ、お婆様」
「姫、動かないで。採寸中」
孫が参謀に指名した少女が、孫の採寸をしていた。
近くには騎士の少女も居る。
「シラヌイがどんな刃も通さない布で服を作ってくれるそうです」
「ふむ?」
「どんな刃も通らないので錬成するしかないうえ、シラヌイしか製法を知らないので今採寸中なのです」
「なんと、そんな布が?」
「はい。そこにサンプルが……シャクティ」
騎士の少女がツェツィーリアにサンプルの布を渡した。
「ふむ…? これはたしか……」
「シラヌイがこれはお婆様の許可を取ってるのでいくらでも量産できると張り切っていました。
マントやローブは目測で作れましたが、インナーは採寸が要るので」
ツェツィーリアが頭に手を当てた。
「なんでも、シラヌイが前世で知る限り最も頑丈な構造の布だそうです」
結局、仕事をサボってシラヌイをモフっていたアルフレッド共々説教を食らう事になるのだった。
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