第二部
嫌悪
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親善試合の代表が決定した後もクリスは黒鋼の屋敷で修業を行っている。
紫闇は別行動を取っていた。
イリアスと共に早朝の走り込み。
何処からかレックスも加わる。
「彼女は強くなりましたね」
彼は嬉しそうだ。
「今ならエリザに勝つ。漸くクリスの念願が叶うんです。胸が高鳴って仕方ない」
そう言うが顔に悲哀が宿る。
「でもクリスが勝つと結婚できないよ?」
クリス、エリザ、レックスの幼馴染みでもあるイリアスは意地悪な問い掛けをした。
「……まあそうなりますね。しかしやはりクリスに勝ってほしい。イリアスも私も彼女がエリザに敗れ辛酸を舐める姿を見続けてますから。クリスの悲しい顔はこちらも悲しくなってしまう」
「じゃあ結婚は諦めるのか?」
紫闇の質問にレックスは口ごもる。
(諦念まみれでも恋心は捨て難いか)
心底クリスが好きなのだろう。
頬を赤くしている。
「レックス、刺客は止められない?」
イリアスが尋ねると顔が曇った。
「不可能です。刺客も全員が貴族。おまけに彼等は【古代旧神】の命令で任務に臨んでいますから誰にも止めることは出来ません」
レックスはイリアスを見た。
彼はかつてイギリスの全戦力を敵に回しても引き分けに持ち込んでいるが、イリアスからすれば結果として目的を達成できなかったので負けに終わっていると言えるだろう。
戦闘では圧勝ですらないほどの差を見せ付けているので本人以外からだとイリアスの勝ちにしか見えないのがあれなのだが……。
「古代旧神に従って死ぬ貴族の運命か。自分には何もすることが出来ない、意味が無いっていう英国貴族の考えは私の性に合わないから拒否するぞ。それは今も昔も変わらないよ」
イリアスは紫闇に同意して頷く。
「動いても無駄なんです」
レックスは自己嫌悪が強い。
諦念は自分への失望から。
「今回はクリスに勝ってほしい。しかし貴方には負けませんよ立華紫闇」
レックスは速度を上げて去っていった。
「彼は自分に対して何の期待もしていないし自信も抱いていない。強かったレックスに戻るにはまだ時間がかかりそうだな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
8月下旬。
関東領域最大のバトルスタジアム【タイタン・スクウェア・ガーデン】
「どうやら無事に興業収入のノルマは超えられそうだね。向子さんもプロモーションに関わった甲斐が有ったってもんだよ」
今回の親善試合で管理運営責任者になっているのは龍帝学園会長《島崎向子》だ。
日本側控え室はモニターを見ていた。
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