暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
疾走編
第二十一話 EFSF〜エル・ファシル警備艦隊〜
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「言われてみればその通りじゃ。士官学校も出とらんのに少将の地位にいるのは儂だけじゃし、貴官や儂の副官のバルクマン大尉も、中央にしてみれば使いにくかろう。考課表を国防委員長に直接みられるのではな。推薦制度自体は残っておるのだから、下手な評価をすればどこに飛び火するか分からんからな。まあ飛び火して喜ぶ輩もおるじゃろうがの、ハハ」

 ビュコック提督は俺の話を聞いても嫌な顔一つしない。むしろ感心感心、といった表情で
髭を撫でながら俺の顔を見ている。
「貴官等が儂の所に来たのもそういう理由が有ったんじゃな。パッと見れば、将官推薦者という優秀な補佐役を付けて人事面でも戦力増強しています、という風に見えるからの。儂も含めて使いにくい者は辺境へ、という訳か。いやはや何と言うか」
「良い面もあります。実際に今の兵力は以前の倍です。しかも一昨年にヤン少佐が成し遂げた撤退作戦のお陰でエル・ファシルという名は全同盟市民の視線が注がれます。という事は国防委員会、同盟軍上層部は我等を無下に見捨てる事は出来ない、という事です。まあ、逆に言えば、我々も下手に失敗出来ないという側面はありますが…」
「それが一番厄介じゃのう」
「全力で閣下をお支えします。失礼な物言いになりますが、小官は閣下の能力に一抹の不安も抱いてはおりません。その閣下の下で働ける事を光栄に思っております。もちろん、一個人としても閣下を尊敬しております」
「面と向かって誉められるとこそばゆいの。ありがとう。では改めて聞こうか。当面、我が艦隊に必要な物は何かね?」
「実戦です。我が艦隊は幸か不幸かまだ実戦を経験しておりません。前哨宙域の哨戒活動も我が艦隊が再編途中だった事もあって、現在も正規艦隊が行っております。小官の着任前及び着任後を見ても、士気、練度には問題は無いと思われます。しかしこれまでの訓練内容は主に我等参謀が中心となって行って来ました。訓練での勇士が実戦では弱兵、ということも充分に考えられますので、まずはひと合戦かと思われます」
「ふむ。訓練での勇士が実戦では弱兵という事もある、か。貴官、もう十年も参謀職に就いているように見えるの。貴官等を推薦したのは誰じゃったかな」
「ドッジ准将閣下です、死後特進されまして中将です」
「ドッジ…ドッジ…おお、セバスチャン・ドッジ中将か?」
「ご存知なのですか?」
「知っておるよ。優秀な方じゃった。当時儂はある(ふね)で砲術長をやっておったが、その時の副長じゃった。故人の悪口は言いたくないが、よくもまあ彼が貴官等を推薦したもんじゃ。当時のドッジ副長が下士官兵と話しておる所を見た事ある者など居らんかったからな。近くに居た儂でさえ見ておらんからの」
「そうなのですか?」
「下士官兵を毛嫌いしていた訳では無かったが、直接交流を持とうとはしておらん
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