疾走編
第二十一話 EFSF〜エル・ファシル警備艦隊〜
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し、士官学校を出ていないという事から、軍組織、国防委員会からの信望、信頼を得ているとは必ずしも言い難い。
「やはりそうですか」
「しかし大尉、儂の意向に沿わない人事や待遇があったからとて、それがこの艦隊に関わって来るとは思えんがの。第一、本人の希望が全て通る組織なぞありはしない。特に軍はそうじゃ。むしろ現在の分相応な地位に就けてくれた事を、軍には感謝しておる」
「はい。それは司令官閣下の仰る通りですし、閣下のお気持ちも分かります。ですがこの場合、この事が、我が艦隊に関わって来ると思うのです」
「ほほう、流石は将官推薦じゃ、視点が違うの」
「いえ、我々も閣下と同じ…いえ、似た立場ですので」
分かりやすくアッと言う顔をするなよオットー。俺の言いたい事が分かってくれたか?
「どういう事かね?」
「軍組織において主流ではない、という事です。失礼を承知で申し上げます、閣下は士官学校を出ておられません。という事はやはり軍主流足り得ません。そして我々は将官推薦こそされましたが、現在の同盟軍の上層部に将官推薦を受けた者は一人として居りません。という事は我々は組織の中で異分子です、やはり、主流足り得ません」
「確かに貴官等は異分子かもしれん、が士官学校を出ておる、それで主流ではないという事にはならんじゃろう?」
「では、閣下が軍に入られた頃の事を思い出して下さい。将官推薦者は居たでしょうか?」
「居ったよ。知っておる人達は皆優秀じゃった。じゃが大半は軍を去ったな」
「その人々は小官のように下士官兵からの、所謂叩き上げでしたか?」
「…いや、軍に関係のある企業や、国防委員会からの紹介で将官推薦を受けて入隊した者が多かったな」
「知人に聞きました。将官推薦制度はコネ作りに利用される事が多くなって、利益より弊害が多くなって使用されなくなったと。それはそうです、箔付けや天下りのコネ作りに利用されていたのですから。しかも推薦を受けた者が中途で軍を去るとなれば、たとえ軍に残る者がいたとしても、組織の中核にはなれません。それに五十年前といえば、所謂『七百三十年マフィア』が台頭を始めた頃です。軍の組織も安定し、将官推薦制度のようなものに頼らなくてもよくなっていたのですよ。制度としては死んだのです。だが小官等が五十年ぶりに推薦された。小官等の来歴や考課表は国防委員長まで報告が行きます。小官等の上司になる方々はそこを考慮して我々を任務につけるでしょう。自分がつけた考課表が直接国防委員長の目に触れるとなれば、下手な事は書けません。言ってしまえば、多くの人々が我々の為に迷惑を被るのです。推薦者が多かった時代ならば…」
「よく分かった大尉。貴官等の推薦が理念通りの物だったとしても、今の同盟軍では傍迷惑、という事じゃな」
「はい。小官の推測に間違いがなければ、ですが」
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