第八十四話 安芸家との戦その四
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「二千といったところじゃな」
「そうですな」
親泰が応えた。
「これは」
「予想通りじゃな」
「五千を号していますが」
「そこまではおらん」
元親は安芸家の軍勢を見て言い切った。
「とてもな」
「旗は多いですが」
「それで多く見せておるだけでな」
その実はというのだ。
「そこまではな」
「おりませんか」
「二千じゃ」
最初に言った通りにというのだ。
「そもそも安芸家の力ではな」
「二千の兵を出すのがですか」
「限度じゃ、もっとも我等もな」
ここで元親は笑って自軍の話をした。
「七千と言っておるな」
「はい、それはですな」
「号しておるが」
「その実はですな」
「五千じゃ」
「実は二千少ないですな」
「そうじゃ」
その数はというのだ。
「だからな」
「お互い様ですな」
「そうなるわ、それでじゃが」
「これよりですな」
「漁師達に安芸川の河口の方から法螺貝を鳴らさせてな」
そしてというのだ。
「わしもな」
「優れた者達を選んで、ですな」
「その者達を率いてな」
そのうえでというのだ。
「安芸城に向かう」
「そうした動きを見せてですな」
「安芸家の軍勢を惑わしてな」
そのうえでというのだ。
「敵が乱れたところでな」
「それがしが、ですな」
元親から軍を任されている親貞が応えた。
「軍勢を率いて」
「そのうえでな」
「攻めるのですな」
「そうせよ、よいな」
「承知しております」
確かな声でだった、親貞は答えた。
「その時は」
「お主なら大丈夫じゃ」
「戦に勝てますか」
「無事にな、この矢流の戦で勝てば」
「そこからですな」
「安芸川の河口まで兵を進めてな」
そしてというのだ。
「そこから川を遡る様にしてじゃ」
「上流にある安芸城を目指しますな」
「そうせよ、そしてじゃ」
「安芸城を囲む」
「そうするのじゃ、よいな」
「わかり申した、では」
「仕掛けていくぞ」
元親はこう言ってだった、すぐに五千の兵の中から強者達を選びそのうえで山道から安芸城に向かった、その時に。
元親は兵達にこう言った。
「よいか、こそこそするのではなくな」
「堂々とですか」
「姿を隠さずですか」
「前に進む」
「その動きを見せますか」
「その様にせよ」
こう兵達に言うのだった。
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