第二部
黒い想い
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
ることで紫闇はどんどん爆発に包まれていくがやはり通じない。
紫闇は失望したのか嘆息。
握られた右拳が金に輝く。
彼が踏み込むと膂力で床が砕けた。
棍棒の滅多打ちを受けている最中でも無視して右腕がUの字を描き顎に拳が刺さる。
爆裂───
拳が帯びた魔晄が弾けた。
黄金の粒子が結界内に飛散。
苛烈な爆発は美しい。
4年生の1位が起こしたそれよりも。
4年の1位は真上に吹き飛ぶと結界の天井に激突し体が押し付けられる。
エネルギーを失ってから落ちてきた。
左手の【古神旧印/エルダーサイン】は光の筋となって紫闇の左手に向かう。
動かない対戦者を見下ろす紫闇。
今の彼には王者の威風が有った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「恐ろしいわね……。立華紫闇が繰り出すあの一撃はこの《エリザ・ネバーエンド》が誇る【風の絶対防壁】をも貫きかねない。おまけにまだ切り札を隠している。あの時間停止に等しい力を使われたら……」
彼女がここまで褒めるのは珍しい。
「私が認めた男は三人目よ」
一人目は英国史上最強の魔術師《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》
二人目は過去の最弱から這い上がってきた《レックス・ディヴァイザー》
「昔の哀れな自分によく似ている」
憎らしい程に。
レックスは花道を歩く紫闇を睨む。
どんなことが有っても諦めない。
諦念を拒絶して跳ね除ける。
ただ前へ。
前へ前へ。
ひたすら前へ。
振り返らず進んだ末に運命を超越できると信じているような男が立華紫闇だとレックスには誰よりも理解できてしまう。
幾多の地獄を越えて何度も狂気を高め、立ちはだかる壁を粉砕してきたことが。
正にかつてのレックス。
「気に入らない。本当にね……」
黒い想いを抱くレックス。
そんな彼にエリザが目を細める。
彼が《クリス・ネバーエンド》以外の人間のことで他者に対してこれほど強い反応を見せるのは本当に珍しいことだから。
「心の底から貴方の友として願うわ。立華紫闇がかつてのレックスに戻してくれることを。私が認めた男の一人が帰って来ることを」
現在の英国最強に近い。
そんな域にまで登り詰めた最弱。
諦めとは無縁のかつて。
「彼が私を変える、ですか。むしろこちらが変えてやりますよ。彼の信念は幼子の幻想に過ぎないことを教えてあげましょう」
(思い知ると良いですよ立華紫闇。貴方はその末に絶望を味わうこととなる。かつての私が心を折られた時と同じように)
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ