前編
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びくっと身構える。
「誰だ。」真田が鋭く問いただす。
「吾輩だ・・・名前は・・・思い出せない。」
先ほどまで『彼』の腕でぐったりしていた猫のような生き物が身を起こしていた。
「猫がしゃべった!」ゆかり が驚きの声を上げる。
「猫じゃねーよ!。猫がしゃべるわけねーだろ。」猫もどきは怒ったように返した。
「それじゃあ、なんなんだお前は。」真田が続けて詰問する。
「人間・・・のはずだ。なんかおかしなことに巻き込まれて、こんな姿になっちまったんだ・・・と思う。」
一同は顔を見合わせた。
「どうも記憶がはっきりしないんだが、ここが現実ではなくて異世界だってことはわかる。」
猫もどき・・・はそう言うと、『彼』の腕から飛び降りて、すくっと地面に立った。
「異世界か。とんでもない話だが、こんな島の存在すること自体が不自然だからな。一概に否定もできん。タルタロスとも違うようだしな。」
美鶴が言った。
「そのタルタロスってのはなんだ?それは知らないぞ。」猫もどきが訊き返してくる。
「影時間にだけ現れる迷宮の塔だ。」真田が答えた。
「意味が解らない。影時間ってなんだ。」猫もどきが興味津々な様子で尋ねた。
「夜0時から1時間ほど、普通の人間には感知できずに存在する時間を我々は影時間と呼んでいる。」
「なんだそれは!そんなの知らないぞ。」
「じゃあ、ここがどこだかは知っているのか?」真田はいらついたように質問を切り返した。
「ここは言わば人間の頭の中だ。人の心の歪みが生み出した異空間だ。」
猫もどきの言葉に、一瞬沈黙が訪れ、皆が顔を見合わせた。
「そっちこそ意味が解らない。」真田がため息をついた。
あまりの話のかみ合わなさに再び沈黙が訪れる。
「とりあえずお互いの情報交換が必要なようだな。」猫もどきが提案した。
「猫の言うとおりだ。」真田も同意する。
「だから猫じゃねえって・・。」
「じゃあ、何と呼べと? 名前、思い出せないんだろう。」
「なんか適当につけてくれ。」猫もどきがぶっきらぼうに言う。
「なら猫でいいだろう。」真田がぶっきらぼうに返す。
「猫じゃねー!!」猫もどきがまた声を張り上げた。
「まあまあ、真田さん。」
にらみ合う二人を取りなすように、ゆかり が口をはさんだ。
「じゃ、じゃあ、さっきのファタモンガー・・・なんでしたっけ?」
「ファタ・モルガーナか?」美鶴は助け舟を出した。
「そう、それから取って、モルガーナ・・・モルガナってどう?」
猫もどきはキョトンとして、それからうなずいた。
「いいぜ。気に入った。」
モルガナはもともと人名でもある。悪くないネーミングだ。
「では当面の間、モルガナと呼ばせてもらおう。」
美鶴がとりあえず話をまとめた。
特別課外活動部の一行は、影時間とタルタロス、
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