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戦国異伝供書
第八十三話 和睦の間にその八

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 元親は妻である彼女に家のことを任せることにして自身は政に専念した、その中で弟達にこう話した。
「この度一条家のご本家から返事が来た」
「それで何と言っておられますか」
「ご本家の方は」
「一体」
「出来るだけ都に戻られてな」
 土佐にいる一条家にというのだ。
「公卿に戻られよとな」
「言われていますか」
「ご本家の方は」
「その様に」
「公卿は公卿であるとな」
 その立場があるというのだ。
「そう言われてな」
「それで、ですか」
「都に戻られて」
「公卿の為すべきことに専念されよ」
「その様に言われていますか」
「それで中村の方にもな」
 土佐の一条家の拠点だ、それで中村というと土佐の一条家の方を示すのだ。
「その様に言われておられる」
「それでもですか」
「中村から出られぬ」
「そうなのですか」
「左様じゃ」
 まさにというのだ。
「しかも中村の方は内輪揉めが起こったな」
「はい、そしてですな」
「妙に揉めて」
「それで、ですな」
「ご当主殿は今中村におられぬ」
 そうなっているというのだ。
「どうやらな」
「何でも追い出されたとか」
「家臣の方々に」
「そうなったとか」
「難儀な話であるな、しかしな」
 元親はさらに言った。
「そうした御仁ならな」
「ご本家からですな」
「尚更都に戻れと言われますか」
「その様になりますな」
「うむ」
 まさにというのだ。
「実際に都のご本家はな」
「そう言われていますな」
「もう土佐で治めることは止めて」
「そしてですな」
「追い出される様な主では話にならぬ」 
 到底という口調での言葉だった。
「今は大友殿のところにおられるというが」
「あの豊前の」
「近頃やけに伴天連と親しくされておるとか」
「あの家に逃れられて」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「再起を計っておられるしな」
「その再起は適いますか」
「そうなりますか」
「中村に戻られますか」
「大友家の力は強い」
 九州に覇を唱えるこの家はというのだ。
「ご当主殿の資質も見事じゃ」
「その大友家が後ろ盾なら」
「それならばですな」
「中村にも戻れますな」
「それも容易くな」
 難しくもないというのだ。
「土佐の一条家に大友家に対することが出来る御仁はおらぬからな」
「ですな、確かに」
「大友家は大きいです」
「そして優れた家臣の方も多く」
「領地も豊かです」
「その大友家に対するには」
「一条家はやはり小さいです」
 弟達も口々に述べた。
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