第79話『夏休み』
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?」
「あ、期待した?」
「し、してない!」
小悪魔の様な笑みを浮かべる結月。そのルックスとも相まって、実に可憐な小悪魔である。卑怯だ。
「勘弁してくれ…」
顔の火照りが冷めず、晴登は頭を抱える。その間も、この話題が途切れることは無かったのだが。
*
「はぁ…今日は散々だったな…」
夕食も風呂も済ませ、部屋に戻った晴登はため息をつく。明日から林間学校だと言うのに、今日はかなり気疲れしてしまった。
「もういいや、明日からのことを考えよう」
今日のことを思い出しても恥ずかしくなるだけ。ならば綺麗さっぱり忘れて、林間学校に気持ちを切り替えた方がいい。
「そう考えると、ワクワクで眠れなくなっちゃうな」
ベッドに入り、一人で苦笑する。小学生の頃は、遠足の日の前夜によくこんな風になっていた。楽しみで楽しみで寝つけないのだ。
「でも寝なきゃ明日に響くし、こういう時は羊を数えてだな・・・」
寝つけない時あるある『羊を数える』。これは試す機会は結構あるのだが、実によく効く。まぁカウントに限界が無いから、いつかは必ず寝てしまう訳なのだが。
「羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が・・・」
そうして数え続け、100匹を数えた辺りから飽きて止めたのだが、次第に晴登は眠りについていった。
*
夢を見た。
地平線まで続く広い広い原っぱに、俺は一人で立っていた。見上げると、透き通った青空が広がっており、雲がちらほらと点在している。太陽の光が燦々と降り注ぎ、その眩しさにたまらず目を細めた。
「この景色…」
見覚えがある。前回がいつだったかは覚えてないが、確かにあの時もこの原っぱに立っていた。
その時だけじゃない。それ以前も、この現象に何回か遭遇した。夢のはずなのに、夢らしくない何か。そよ風が頬を撫でるのが、やけに現実的に感じる。
「今は晴れか」
というのも、この現象の天気は晴れだけではない。曇り空も、雨空も確認している。恐らく、雪も雷もあるだろう。
まぁそれが何に関係するのかと言われれば、何も答えられないのだが。
「・・・あれ、雲が…」
突如として、空が厚い雲に覆われた。これほどの量の雲なんて、さっきまでは無かった。いきなり現れたように感じる。
「あ、雨…」
そしてポツポツと、雫が空から降りてきた。夢の中ではあるが、ひんやりとした冷たさを感じる。
雨の勢いは次第に増し、ついに夕立の様な土砂降りになった。しかし俺は傘を差すこともできず、ただただその水流を浴び続ける。
冷たい。寒い。髪や服が濡れて気持ち悪い。このまま夢が覚めるまで、
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