暁 〜小説投稿サイト〜
『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
邂逅-うんめい-
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は何も出来ない。
いや、出来ないじゃない。
何かないか探すんだ。
助けてもらいっぱなしなんだ。
ここはせめて男を見せてこちらも危機を救うべきでは?

そう悩んでいるとき、爪先に何かがこつんと当たった。

「これは…。」

蹴ったのはおそらく学生のものだったであろう、多少血のついている竹刀袋だ。

「…。」

竹刀を握るのは高校以来だが…やるしかない。
紐をほどいて竹刀を取り出す。
両手でしっかりと握りしめて俺はムシュフシュに立ち向かった。

「うおおおおおおーっ!!」

俺の咆哮に瀕死のムシュフシュはゆっくりと振り返る。

「こんのっ!!」

振り上げ、力一杯の一撃を振り返ったムシュフシュの頭におみまいする。

「!」

全力の一撃は彼の脳を大いに揺さぶったことだろう。
ムシュフシュは動かなくなるとふらつき、そのままドサリと倒れた。

倒した?多分違う。気絶しただけだ。

「…。」

そして上からはワイバーンの残骸がボトボトと落ち、コスプレの人も音もなく着地。
その瞳は俺を映し、二人の間に少しの沈黙が流れた。

「あ、あの…。」

気まずくなって先に話したのは俺だ。
女性と目をあわせることすらロクに出来ないので、たまらず話しかけた。

「さっきの、ありがとね。」
「あ、いえ…どういたしまして…。」

女性とうまく話せないことをそのままにしてきたツケが今ここで回ってくるなんて誰が思っただろうか。

「あ、あのー…。」

次になんてきりだそうか。
そう思っていると彼女は一歩、また一歩とこちらに近付いてくる。

「え…?」

その手に持った、刀を振り上げて。

「え、あ、いや!ま、待って!!ごめんなさい!!」

どうしてこっちにいきなり切りかかってくる?
何か悪いことをしたのだろうか?心当たりはないが必死に謝る。
だが彼女は止まらない。
そして

「…!」

俺のすぐ後ろにまで迫っていたムシュフシュを一撃で仕留めた。
そうか…べ、別に俺に斬りかかったわけじゃないんだ。

「ど、どうも…。」
「勝った後でも油断しない。いつどこで狙ってるか分からないんだから。ほら、」

尻もちをつき、どもりながら礼を言う俺。
武蔵…らしき人は要は勝って兜の緒を締めよ的なことを言いつつ、そんな間抜けな俺に手を差し伸べてくれた。

「立てる?」
「だ、大丈夫です…すいません。」

偶然にもあの運命の構図ではあるけど、女の子に起こしてもらうのはさすがにかっこ悪いと思った。
腰を抜かした訳では無いので自力で立ち上がり、土埃のついたお尻をパンパンとはらう。

「まったくびっくりしちゃった。帰ってきたらマスターがいなくなってたから。」

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