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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン24 十六夜の決闘龍会
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の少女を目を丸くして見つめていた笹竜胆だったが、やがてくすくすと笑いだした。

「ほほ、そう固くならずともよい」
「は、はい!ありがとうございます!」
「やめいと言うに。それにしてもお主、なかなかよい目をしておるな。力強く、どこか懐かしい……これ、司会。先ほど、伝説の血がどうこう言っておったのう」
「はいはい。なんとこちらの八卦九々乃さん、デュエル産業の創始者にして界隈の生ける伝説。あの『グランドファーザー』七宝寺(しっぽうじ)(まもる)氏、その血筋と魂を誰よりも色濃く受け継いだ実の姪となっております。今回は本人たっての希望もあり、急遽出場を決定いたしました」

 偉そうなことを言ってはいるが、全て古雑誌からの受け売りである。この世界の人間ではない異邦人の彼にとってのデュエルモンスターズの生ける伝説といえば創始者のペガサス・J・クロフォードやデュエルキング武藤遊戯を指す言葉であり、正直七宝寺守に関する伝説はまだピンときていない。
 しかしその名前の持つ影響力は、全盛期を遠く過ぎた今もなお大きかったのだ。

「ほう」
「なんと……!」

 居並ぶ元プロたちが小さく驚きの声を漏らし、客席でも主に年配の客を中心に小さなどよめきが巻き起こる。もはや、まだ中学生でしかない少女の参加を止めようという者は誰もいなかった。一変した周りの空気になぜだか無性に親友が遠くに行ってしまったような気がして、竹丸が壇上の少女をそっと見上げた。
 しかしあいにく、少女はその視線に気づかなかった。気づくだけの余裕がなかった、といった方が正しいか。七宝寺の姪……それを聞いた笹竜胆は先ほどまでの柔らかな物腰から一転して目の前の相手を見定める戦士の目になっており、その視線を前に蛇に睨まれた蛙のような状態に陥っていたためである。
 そんな本人にとっては何時間にも感じられた数秒間の後、ややあってふっと相好を崩す笹竜胆。和服の袖で口元を隠して小さく笑うその姿は、すっかり元の柔らかな雰囲気に戻っていた。

「ふうむ、あの御仁の姪、とな。確かに、胆力は申し分ないと見える。怖がらせてしまってすまなかったのう、よくぞわらわから視線を外さなかった」
「え?えっと、ありがとうございます……?」

 少女なりの素直な返事がよほど面白かったのか、またしてもくすくすと漏らした笑みで感謝の言葉を受け止める。

「よい、よい……それよりもお主、植物の()を感じるの。わらわと同じ、よき気質じゃ」
「え……?」

 ただ向かい合っただけで初対面の女性に自分のデッキを言い当てられた驚きと、元とはいえどプロデュエリストたる彼女が自分に賛辞を贈ったことを理解しての純粋な喜び。2つの感情が混ぜこぜになり言葉に詰まり目を白黒させる少女をよそに、起動されてからずっと出番を待ちわ
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