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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン24 十六夜の決闘龍会
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「第一試合、勝負あり!それでは皆様、最後まで堂々と戦いました2人の選手に精一杯の拍手を!」

 司会……清明の声が聞こえる。すぐそばで巻き起こる割れんばかりの拍手の音も、糸巻にはどこか遠くに聞こえていた。感触を確かめるように軽く手を振り、首を振る。今のデュエルによる体への負担は薄い。まったく影響がないわけではないが、この近辺のどこかに奪われた最新式「BV」が存在することを考えると妥当なところだろう。
 少なくとも今の一戦は、捜査という観点では外れを引いた形になる……それでもその事実に、どこかほっとしている彼女がいることも事実だった。少なくとも『考古学者』は、この件とは無関係だったわけだ。

「まだ衰えたつもりはなかったんですが、現役にはさすがに勝てませんね。結果的に、オベリスクを出したことが裏目に出ましたか」

 考えに集中している間に近づいてきた寿が、歩んできた年月に揉まれ皺だらけの手を差し出しているのが見えた。一度考えを打ち切ってその手を握り返し、小さく微笑んだ。

「いいや、寿の爺さんは間違ってなかったさ。んで、アタシも間違ってない。それでもどっかで決着がつくのが勝負、だろ?」
「おや、七宝寺さんの受け売りですか?懐かしいものです、彼もよくそんなことを……と、失礼。あまり長居しては、次の対戦の邪魔になりますね」

 背を向けて壇上を後にする老人の背中にバレたか、と小さく舌を出す糸巻。実際今のもっともらしく述べたセリフは、彼女が考えたものではない。肩をすくめて彼女もまた戦場を離れたのを見計らって、清明の声がまた響く。

「それでは続きまして、第二試合!時に天を翔け、時に海を割り、時に地を砕く竜たちの集う場所。かつて十六夜の月満ちる空にデビューを飾ったという妙齢の女性デュエリスト、笹竜胆(ささりんどう)千利(せんり)さんです、どうぞーっ!」
「うむ。いよいよわらわの出番かえ」

 しゃなりと擬音が聞こえてくるような優雅な動きで立ちあがったのは、遠くからでもよく目立つ真っ赤な紅葉柄の着物に身を包んだ和装の美人。糸巻よりもデビュー自体は早い先輩だが、その年齢は不詳。少なくともその艶やかな笑顔は彼女の記憶の中にあるままで、本来刻まれていなければおかしいはずの小皺さえ見当たらない。

「ほほ、待たせたのう皆の衆。ようやっと本命の登場じゃ」

 口元に手をやって笑うしなやかで上品な動作のひとつひとつも、あの時からまるで年を重ねたようには見えない。この一見するとイロモノそのものの格好をした時代錯誤のロートル姫さん(糸巻談)はしかし、そんな印象からは想像もつかないほどに大胆かつ繊細にカードを扱う実力者だったというのだから、世の中分からないものである。派手な試合運びから人気も高かった彼女をそのデビュー時の月夜になぞらえて『十六
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