第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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たりやったりするし。
鈍感かと思えば、落ち込んでる子や困ってる子に誰よりも早く気付いたりする。
本当に分からない……。
だから色々ちょっかいを掛けたりした。
わからないのが嫌だったし、興味もあったから。
わざと困らしたり、からかったり。
いたずらしたり、たまに助けたり。
はぁ……本当に色々やったな〜……なのにあの人は全く気にしないし……。
いっつもあの子とばかり話して……。
……たくっ、少しはこっちを見なさいよね。
え?
あ……あれ?
あれ?
あたし今……?
何でそんなこと…………え?…………。
あ、ああ……。
はっ、ははは……。
そっか……そういうことか……。
わかった。
なんでこんなにイライラしているか。
なんであの子にムカついていたのか。
なんでこんなに悲しいのか。
なんでこんなに辛いのか。
なんで……。
あの子のせいじゃなかった。
簡単なことだ。
ただ、あたしが……
あたしが……。
「あたしが……シロウのことを好きになったからだ」
自分の気持ちに気付いたら、まだどろどろとしたものがお腹に溜まってる感じはしているが、スっと気が楽になった気がした。
身体の中の嫌なものを吐き出すように深く溜め息を吐き、背を伸ばしながら息を思いっきり吸う。
顔が天を向くと、二つの月が大分傾いているのが見えた。
どうやら店を飛び出してから、それなりの時間が経ったみたいだ。
周りを見渡してみるが、星明かりで精々物の輪郭が分かるぐらいだ。自分が今何処にいるかわからず、ジェシカはちょっと困ってしまった。
「……どうやって帰ろう」
ポツリと小さく呟き、周りを見渡す。暗いとはいえ、店からそんなに遠くはないはずだ。知らずこんなところまで来てしまった自分に呆れつつ、ジェシカは店に帰るため足を動かし始めた。
「そっか……いつの間にか惚れちゃってたんだ」
物音一つしない暗い夜道を、微かに空を見上げながら歩く。
「……でも……諦めなくちゃ」
小さく溢れた声は、寂しげであった。
「……相手は貴族だし」
ゆっくりと足を進めながら、そっと目を閉じる。
目蓋に浮かぶのは、桃色の髪を持つ少女。
士郎を殴ったり蹴ったり罵声を浴びせたり。
めちゃくちゃな事してるけど、あの子が士郎に惚れてるのは一目見ればわかってしまう。
そして士郎もあの子のことを憎からず思ってるのもわかってる。
だから無理。
……恋敵が貴族だなんてムリムリ……。
ああ……。
わかってしまえば簡単なこ
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