第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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げようとするジェシカを逃がさないとばかりに男の一人が腕を掴む。
「離し――」
「うるせえっ! ちょっとこっち来い!」
掴まれた腕を振り、男の手から逃げ出そうとしたジェシカだったが、男の恫喝に怯んだ隙に、反対に外に向かって引きずられだした。
「え、ちょ、ちょっと待って、ねぇ」
「いいから黙って――」
男達から引きずられながら、悲鳴のような抗議の声を上げるジェシカを、男が怒鳴りつけようとした時、
「お客様。従業員が嫌がるような行為は謹んでいただけませんか」
男とジェシカの間にたった士郎が、男に話しかけた。
「あん、誰だテメェ!」
「オメエには関係ねぇだろ!」
「引っ込んでろ!」
ジェシカの周りにいた男達が士郎の周りに移動すると、恫喝するように士郎に詰め寄ってくる。百八十センチを軽く超える士郎だったが、詰め寄ってくる男達は更に高い身長の持ち主だったことから、士郎は男達に埋もれるような形になっていた。士郎は慌てることなく、男達に笑みを向けると、ジェシカの腕を掴む男の手を掴んだ。
「ああっ?! 何す――イタタッ!」
唐突に腕を掴んできた士郎を睨みつけよとした男だったが、急に腕が痺れ手を離してしまう。急に手を離されたジェシカが転けそうにになるが、転ける直前に士郎に引き止められた。士郎はジェシカの腕を引き、自分の下に引き寄せる。
ジェシカを自分の後ろに下げた士郎が、男達に顔を近づけると、ドスの効いた声を発した。
「あまり騒ぐと力ずくで放り出すぞ」
「うっ」
士郎の声と視線に怯んだ男達は、互いに目配わせすると士郎に背に隠れるジェシカに視線を向け、
「ちっ」
「覚えとけよ」
「……」
それぞれ悪態をつくと、背を向け店から出て行った。
男達の姿見えなくなると、士郎は後ろにいるジェシカに顔を向けた。ジェシカは士郎に顔を向けず、黙って俯いている。
「一体どうしたんだ」
「……ごめん、ちょっと頭冷やしてくる」
「あ、おいっ」
士郎が声を掛けようとすると、顔を上げることなくジェシカは士郎から逃げるように駆け出した。呼び止めようとした士郎の声を振り切り、ジェシカは店から飛び出す。
「ったく。さっきの男達がまだいるかもしれないってのに」
「あ、シロウ!」
「ちょっと行ってくる!」
ルイズの声を背中に受けながら、士郎もジェシカの後を追って店から飛び出した。
何やってるのよあたしは……。
勝手に馬鹿やって勝手に逃げ出すなんて……。
どうしてこうなって……。
いや……理由は分かってる。
あの子だ……あの子が来てからだ。
暴れたり怒鳴ったりしても、時折見せる仕草からあの子があたし達
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