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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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らば、その視線に直ぐに気が付いたジェシカがフォローや言い訳を行い。男達からの嫉妬を有耶無耶にしていたはずが、今日のジェシカは全くそれに気がついていなかった。

 定石を崩してチップを集めた結果。四日目の結果発表では、ジェシカが巻き返しルイズから一位を奪い返すことに成功した。





 そしてチップレース四日目の夜。
 ルイズは士郎の上に馬乗りで跨っていた。

「ムキー! 何よあの胸だけ女! 男に擦り寄ってチップを巻き上げるなんて! 卑怯よ卑怯! 正々堂々戦いなさいよ一人だけ武器なんか使っちゃって!!」
「落ち着、け、ルイ、ズ。チップは、稼げ、たんだから、いい、だろ」
「良くないわよシロウ! 折角一位だったのに!」

 士郎の胸元を掴みガクガクと揺さぶるルイズを落ち着かせるようと、ルイズを胸元に抱き寄せた士郎は、泣く赤子をあやすように背中をぽんぽんと優しく叩いた。
 抱き寄せられたルイズは、興奮した野生の野獣のように荒い息を漏らしていたが、段々と落ち着きを取り戻していく。ゆっくりと息を吐いたルイズが、士郎の胸元から赤くなった顔をゆっくりと持ち上げると、
 
「……もうっ……子供じゃないんだから」

 そう、もごもごと口の中で呟いた。
 口の端を軽く曲げた士郎と視線が合ったルイズが、恥ずかしげに士郎の胸元に顔を戻す。恥ずかしがるルイズの頭を撫でながら、士郎は近い天井を見上げる。視線を天井に向いているが、見えているものは暗い天井ではなく。

「……危険だな」

 ジェシカを見つめる客の目の中、危険な光を宿していた男が何人かいたことに士郎は気が付いていた。

「……取り越し苦労だといいんだが」









 チップレース五日目。
 開店してから暫らく時間が過ぎた頃、士郎が厨房で料理をしていると。

「シロウさん! 早く来て!」

 長い金髪を振り乱しながら、一人の少女が厨房に飛び込んできた。
 金髪の少女は鍋を振っている士郎まで駆け寄り腕を掴むと、焦った顔で必死で詰め寄ってきた。

「ジェシカが客と揉めてるの! 早く!」
「っ! 分かった」

 フリフリのエプロンを取り外しながら、駆け出した士郎が客席に飛び込むと、客の男に取り囲まれたジェシカの姿が飛び込んできた。

「なあ、おいジェシカ! どういう事だよ! 何がチップなんていらないだよ! あんなに男に擦り寄りよりやがって!」
「キスしたいとか言っておきながら、全く身体に触らせなかったのに、他の男ならいいのかよ!!」
「あっ、いや、それは」
「おい! どういう事だよ!」
「きゃっ」

 興奮した様子の男達に詰め寄られたジェシカは、何時もの気の強さは鳴りを潜め、男達から逃げるように後ずさりを始めた。逃
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