第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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二つ目は何かを貰ったら満面の笑顔を浮かべること。
たったそれだけ? とルイズが聞き返してきたが、それで十分だった。
ルイズに男のあしらい方……つまりはチップの巻き上げ方を尋ねられた士郎は考えた。
理想は、着かず離れずの距離で、ルイズの本性を知られることなく客からチップを巻き上げること。
それには、必要最小限の接触で相手を魅了しなければならない。ルイズは身体的に他の少女達に劣る点が多々あるが、それを突き放すほどの気品と美貌を持っている。ならばそれを活かせばいい。荒い気性を接触時間を少なくすることで気付かせず。魅力にかける身体は、気品が薫る物腰で隠せばいい。
そして考え抜いた結果、一つの結論に至った。
それは、客に勘違いさせようと言うものだ。
ルイズの顔立ち、物腰はどう見てもただの平民には見えない。そんな少女が、こんなところで給仕をしているのをおかしいと思う人物が現れるだろう。ならば、それを利用すればいい。
そして士郎は、ルイズを気品が溢れる謎の少女にした。
視界の端では、ルイズがまた別の男から何かを受け取っている。問題がないことを確認した士郎は、壁から背を離すと、厨房に向かって歩き出す。
「……計画通りだな」
確認するかのように小さく呟いた士郎は、そのまま振り返ることなく厨房の中に入っていった。
チップレース四日目。
驚異の追い上げで一位に上り詰めたルイズは、今日も客の前で小さな笑顔を浮かべ、時に満面の笑みを浮かべる。その度にルイズの手に金貨や銀貨が入った袋が積み重なっていく。
それに競うようにチップを集めるのは、いつも以上に胸元が開いた服を着たジェシカだった。
ジェシカの客からチップを巻き上げるやり方は、ある意味ではルイズと似ている方法だった。簡単に言えば、客に惚れていると勘違いさせるのだ。その主な方法は、やきもちを焼くフリをすること。ジェシカにやきもちを焼かれていると勘違いした客は、やきもちの演技をしているジェシカの機嫌を治すため、チップを渡す。そしてチップを貰うと、何か言って客の前から姿を消す。ただ怒鳴って嫉妬を示すだけでなく、服の裾を掴んで寂しげに呟く等、様々な嫉妬の示し方をするジェシカは、さすが『魅惑の妖精』亭の看板娘だと言えるだろう。
しかし、今日はその動きにちょっとした陰りが見えた。
それは陰りというよりも、焦りと言ったほうが正しいだろう。
肉感的身体の持ち主であるが、客の相手をする際は、その肉体を使うことよりも、言葉巧みに客からチップを巻き上げていたジェシカが、客に擦り寄っている。いつも以上に大胆な行動をとるジェシカに、客は大いに喜びチップを弾むが、客の中からチラチラとその様子を憎々しげに見つめる目があった。何時もな
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