装者達のサマーバケーション
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叫び。
苛立ちが恐怖へ一転し、男は情けない声を上げながら逃げ去って行った。
「クリスちゃん、ごめん! 1人きりにさせちゃって……大丈夫かい?」
「ジュンくんなら来てくれるって、信じてたから……。だから、そんな顔しなくても大丈夫だぜ」
心配そうな顔をする純に、クリスは笑顔を見せる。
無理をしているわけでは無い、と納得した純は、そのまま眼鏡をかけ直す。
「そうか……。クリスちゃんが無事で何よりだよ」
「お、おう……悪ぃな、心配かけて……」
安堵の笑みを見せる純に、クリスは思わず目を逸らす。
(何度も見てる筈なのに……その笑顔は反則だろ!)
なお、このやり取りを見ていた周囲の海水浴客は、食べていたかき氷がいつの間にか練乳入りになっていたような錯覚に陥ったという……。
「あれ? 風鳴翼じゃない?」
「え? そっくりさんでしょ」
「本人だとしても、プライベートだろ」
「それにしても綺麗な人ね〜」
「隣の男の人、彼氏かな?」
「やはり、幾らか視線を感じますが……」
「大丈夫ですよ。バレてません」
やはり緒川さんも一緒に海を満喫してほしい。
そんな翼の言葉を受け、緒川が取った策がこれだ。
翼は今、サングラスをかけさせた翼の髪を下ろしている。
しかもその手は、隣を歩く緒川が優しく握っていた。
海に来た一般人カップルとして振る舞い、翼とそのマネージャーと分からせない。
今の二人は恋仲だが、あまりこういった事は出来なかった立場だ。
周囲の目を欺きつつ翼の願いを叶える、一石二鳥のお忍びデート。
正に忍者、緒川慎次である。
「何かご不満があれば言ってください。その……僕もこういった経験は、初めてですから」
「では……その……慎次さん、もう少し腕を絡めても……」
その時であった。
「おねーちゃん、ここどこー……?」
「泣いちゃダメ! パパもママも、ぜったい見つかるから……」
周囲をキョロキョロと見回し、弟と思われる小さな男の子の手を引っ張っている少女が目に入った。
翼が2人に駆け寄ると、姉である少女は弟を庇うように立った。
「ねえ……もしかして、迷子?」
しゃがんで姉弟に視線を合わせ、翼は微笑みながら問いかける。
「うん……」
「お姉さん、パパとママがどこにいるか知らない?」
「ごめん……それは分からない。でも、お姉ちゃん達も一緒に探してあげる」
怖がらせないよう、なるべく柔らかい言葉で。
緒川とのデート中という事もあって、今の翼の口調からは防人語が大分抜けていた。
「ありがとう……」
「違うよ。年上の人には“ありがとうございます”だよ」
「ありがとう、ございます……」
「ちゃんとお礼が言えるなんて、
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