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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と魔剣《デュランダル》 X
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緩慢と靡き、冷気の中で焔に浮かぶ陽炎の向こうを見据えている。
ジャンヌが息を呑む音が、はっきりと聞き取れた。
《浅緋の蛇蝎》にしろ《鳳仙花蔓》にしろ、やはり彼女についての情報を件の司法取引で得ることが出来た功績は大きい。そう胸中で理子に感謝しながら、意識をジャンヌに戻す。
それを合図に、顕現した《鳳仙花蔓》は炎舞となる。蔓は華奢な身?を灰燼とすべく、或いは、鳳仙花は炎塵を降らすべく。
陽炎が虚空を創り出し、蔓は其処と実体とを穿つ。花弁は虚空に歪みながらも妖艶に靡き、或いは爆ぜた。
ジャンヌは聖剣で蔓を斬り、氷霞で炎塵を防いでゆく。《鳳仙花蔓》は留まることを知らず、防戦一方に追い込みさえする。
その動乱の中で、《境界》はジャンヌを捉えた。焼灼する《緋想》を彼女の首筋に突き付け、そっと背後に立つ。
前方は《鳳仙花蔓》のみではない。アリアとキンジも居る。そして後方を俺に挟撃されているこの状況は、どう見てもジャンヌの敗勢だ。それでも彼女は、闘志を横溢させていた。
それもそうだろう。ましてやジャンヌら一族は──源流は『ジャンヌ・ダルク処刑裁判』から──焔への対抗策として、これら魔法を研究してきたのだから。どうあろうと、見聞に関してはこちらが不利だ。だから楽観論で適う相手ではないと、ずっと意識している。相対的にそれが、ジャンヌの闘志になるのだ。
「それで私を追い詰めたつもりか?」
何も変わらない、睥睨にも近しい声色で、彼女は冷嘲する。
「聖剣デュランダルに、斬れぬものなどない──!」
自らの矜持を、ジャンヌは確立させている。だからこそ強い。どんな状況下であろうと、矜持だけを松葉杖にして躍起するのだ。
そこに、かつてのオルレアンの聖女と呼ばれていた始祖の面影が、白昼夢のように揺らめいた気がした。
聖剣を彩る幾多の輝石は、焔の浅緋を映射している。やたら清澄に瞳に映っていて、それが自分に向けて振り上げられた刀身だと気が付く頃には、既に身を引いて躱そうとしても遅かった。
「──ッ」
紅血が舞い、声を上げて地に落ちる。ポタタッという乾いた鳴き声だけが、この地下倉庫の一帯に反響した。
首筋の皮膚を裂く艶かしい感触と、鮮血の吹出する感触とが、痛覚という一点に於いて綯い交ぜになって襲いかかってくる。
アリアの叫喚が距離よりも遠く聞こえた。靄が掛かったような脳髄を自分で無理矢理に晴らしながら、やはり漠然とした意識の中で、《境界》諸共にジャンヌから距離を置く。
この傷そのものは致命傷ではない。が──僅かにでも意識が《五行陰陽》の絡繰りから逸れてしまったことは、致命傷だ。
「……一筋縄じゃ、いかないね」
手の甲で血を拭いながら、枯れた《鳳仙花蔓》と、息
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