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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と魔剣《デュランダル》 X
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いのだ。一杯噛ませたといって、果たしてそれが大いなるアドバンテージになるか? ……それはこれから、身をもって証明してくれるだろうが」


ふむ、そこまで言うなら、証明してあげようじゃないか。


「──さぁて、本番の開幕だ」


小さく深呼吸する。酸素が肺胞で融和して、血に乗って全身を駆け巡るその感覚が、嫌に明瞭に感じ取れた。
そんな奇怪な感覚を拭い取るために、片腕を掲げた──明らかに今までとは規模の比較しようもない《境界》が、ジャンヌの四方を包み込んだ。それらは、尚も累乗数的に展開されてゆく。


「……本気か、陰陽師」
「ふふっ、勿論だよ。──これだけの数、全てを消せるかな?」


指で鳴らした小気味良い音色が、この地下倉庫に木霊した。
虚空を切り裂いた《境界》は、その時空の歪みから仄かな朱を生んでゆく。初夏に散る陽炎のように揺らぎながら、残像とともにただ一点を目掛けて飛来していった。

刹那、轟音とともに視界が煙に包まれる──さて、どうなったものかと刀の切っ先を見据えた。
そして、僅かに気の緩みが見えたその隙に、微かな冷気とともに何かが頬を伝った。拭う手の甲には、水滴が付着している。
髪と頬に張り付くように、それらは滴下してきた。


「雨……?」


……いや、違う。これはスプリンクラーだ。
先程の弾幕は明らかな熱量を有していた。陽炎の立つほどだ。ともすれば、それによってスプリンクラーが誤作動を起こしたということになるが──はてさて、ではこの異常なまでの地下倉庫の室温(・・)の低さは、どう証明すればよいのだろうか。


「──迂闊に雨を降らせると、莫迦(ばか)を見るぞ」
「……なるほど、そういうことかぁ」


ふむ、合点がいったね──と内心で嘆息してから、俺は後方支援の2人へと指示を出す。「短期決戦で決めるよ」
そうして、2人は背いた。この現状をよく理解している。ジャンヌの『してやったり』というような言動からも明らかに、この攻撃は恣意的にさせられた(・・・・・)ことになるのだ。

ジャンヌが纏っていた氷霞を見れば明白なことだ。彼女は氷を操る。それは、間接的に冷気を操ることにも直結する。
こちらが放った弾幕は、恐らくあの氷霞を幾重にも結合させて造った防御結界ででも防いだのだろう。四方を囲まれて身動きが取れないはずなのだから、それ以外の方法は有り得ない。

彼女の狙いは、まさにそこだったのだ。熱量と陽炎、爆散したその熱気を利用して、つまりは地下倉庫内に設置されているスプリンクラーを利用して、広範囲に雨を降らせた。
一時的ではあるがスプリンクラーは作動し続ける。その間に素早く氷霞を煙に紛らせて拡散させれば、伝導性を持つ金属の壁や床は、瞬く間に冷却さ
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