第八十二話 本山城へその二
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「最早な」
「戦にならぬ」
「他の国から浪人達でも雇ったか」
「それか百姓達をかり出したか」
「どちらにしても兵がそこまでおるか」
「五千もおるとなると」
「難しいぞ」
「全くじゃ」
「この城を守れぬ」
「五千の兵で攻められてはな」
「最早な」
こう話してだ、そのうえでだった。
本山家の面々はこれからどうするかを話した、籠城かそれとも城を明け渡すのか。そのことを当主の本山茂辰彼の嫡男である親茂の前で話した。
「さて、どうすべきか」
「ここは籠城か」
「しかし五千の兵相手でこの城を守れるか」
「朝倉城ならともかくじゃ」
この城なら守れたがというのだ。
「この本山城はどうじゃ」
「この城は我等の本貫であるが」
「朝倉城と比べると小さい」
「それを考えるとじゃ」
「とても守りきれぬ」
「城を捨てるべきではないか」
「他の城に行くべきではないのか」
こう口々に話していた、その家臣達を見てだった。
茂辰は親茂にどうかという顔で問うた。
「お主はどう思う」
「はい、五千の兵が相手ではこの城では無理です」
親茂は父だけでなく家臣達にも話した。父に答えつつ家臣達にも話したのだ。
「ですが瓜生野城ならです」
「守れるか」
「はい、例え五千の兵が相手でも」
「左様か」
「ですから」
「この度はか」
「瓜生野城までです、そして」
親茂はさらに話した。
「安芸家に働きかけ」
「東からか」
「長曾我部家を攻めてもらいましょう」
「そして今の苦境を乗り切るか」
「はい、そして長曾我部家を退け」
「この本山城にか」
「朝倉城もです」
この城もというのだ。
「取り返しましょう」
「そうするか」
「はい、ですからまずは」
「瓜生野城までか」
「退きましょう」
「皆の者はどう思うか」
茂辰は息子の話を聞き終えて家臣達に問うた。見ればまだ若いというのに随分と疲れと老いが見えており若々しさと英気に満ちている親茂とは顔立ちは親子だけあって瓜二つだが全く違う印象を与えている。
「この度は」
「はい、若殿がそう言われるなら」
「我等に依存はありませぬ」
「ではです」
「その様にしましょう」
「瓜生野城まで退く」
「安芸殿ともです」
この家ともとだ、家臣達は応えた。
「連絡を取りです」
「そしてそのうえで、です」
「長曾我部家と共に戦い」
「盛り返しましょう」
家の勢いをというのだ。
「そうしましょうぞ」
「そしてその為にもです」
「今は退きましょう」
「瓜生野城に」
「そうしましょう」
「ではな」
茂辰は弱い声で頷いた、そうして本山家は全軍で本山城を退き瓜生野城まで退いた。それを受けてだった。
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