第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第7話 探求の心
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「あの……」
勇美は永琳を呼び止めたはいいが、その先の台詞を紡いでいいか暫し迷ってしまった。それは本当に聞いていい事なのか不安があるからだ。
「何? 構わないで言ってごらんなさい」
「あ、はい……」
しかし、もう永琳を呼び止めてしまったのだ。だからもう後には引けない、勇美は意を決してその言葉を口にした。
「八意先生、依姫さんってどんな人なんですか?」
「……」
勇美の言葉を聞いて永琳は暫しその内容を脳で受け止め、そして答えを紡ぎ出した。
「それは、彼女が勇美ちゃんへの接し方そのもので分かるんじゃないかしら?」
にっこりと微笑み永琳は言う。あなたと依姫は良好な関係を持ち始めた、それが答えなんじゃないかと。
だが、勇美が聞きたい要点はそれではなかったのだ。
「はい、私に依姫さんはとても良くしてくれます。でも、私が聞きたいのは依姫さんが他の人にどう接しているかという事なんです」
勇美のその言葉全てを聞き終えた永琳は朗らかな表情を保ちながらも、疑問を浮かべたものとなっていた。
「どうしてそういう事を聞くのかしら?」
「それは……」
永琳に言われ、勇美はその質問に至った理由を話し始めていった。
それは勇美の家庭とその周辺の環境にあった。前に勇美が話した通り、彼女の母親は高いカリスマ性を有し我が子を自分の一部のように扱う支配型の人間であり、その母親の周りの人間も母親に心服してしまっているのだ。
支配型の人間。それは我が子のような自分の一部に対して傍若無人に接する一方で、外部の人間にはとても紳士的で物腰柔らかく包み込むような対応をするのである。
その対応に大衆は陶酔してしまうのである。いくら我が子には辛辣に接しようと自分には親切に接してくれる為、その面のみがその人間の本質だと人は思うのだ。夏目漱石の文学作品『こころ』では女性は公平な愛よりも自分にひいきした愛を喜ぶという旨の表記があるが、それはどちらかというと女性に多いという事で実際は男女問わず抱く感情なのである。
閑話休題。それ故に勇美は心に決めているのだ。いくら自分に親切にされようとも、周りの人間には辛くあたるような人には関わりはしまいと。それが勇美が母親とその取り巻きから反面教師の形で学んだ信条なのだ。
その勇美の主張を、永琳は真摯に受け止めていた。
「分かったわ、勇美ちゃんの気持ち」
「ありがとうございます」
話を抜かりなく聞いてもらえた上に笑顔で返されて、勇美は目頭が熱くなるのが分かるのだった。
「疑心暗鬼ですみません。依姫さんは私の母親のように二面性のある人だとは思わないのですが、念を入れたくて」
「いいのよ、人を安易に信じちゃいけないからね」
そう言う永琳であったが表情は複雑であった。勇美の心掛けを評価しつつも、元自分の弟子である
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ