第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第5話 毒VS鋼:前編
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「もう始まっているのかしら?」
そう言って今まで人里で用事があって出掛けていた永琳がその場に現れた。
「あ、八意様」
「お師匠様」
それに気付いて依姫と鈴仙が返した。
「丁度今からですから大丈夫ですよ」
依姫はそう永琳に安心するように言った。
ここは永遠亭の大庭園である。先程勇美が依姫と共に神降ろしの力を使った、自らが作り出す分身の機械であるマックスの新しい運用の鍛錬を行っていた場所である。
だが、今度は練習ではないのだ。弾幕ごっこを通した本番なのである。
「準備はいい?」
勇美の初の対戦相手であるメディスン・メランコリーは勇美に確認をとる。
「はー、はー、はー。いつでもいいよ」
言葉では了承の意を示しているが、どうしても態度で緊張は隠せない勇美であった。どうも正直な少女のようである。
「……リラックス、リラックス。肩の力を抜かないとうまくいくものもうまくいかないわよ」
これから戦う相手のそんな様子に、メディスンは呆けながらも諭してくれた。
「ありがとう〜、メディスンちゃん」
敵に励まされるという痴態を晒した勇美は、そんな事も気にせずに相手の気遣いに嬉しくなって破顔した。
「そうそう、そう気張らないのがいいよ。私も出す毒の調整をして、あんたの体を余り蝕まないようにするからね」
それが今回の戦いでメディスンが自分に課したルールであった。
──辛い経験をしたメディスンに対して、同じく辛い思いをしながら自分を気遣ってくれた勇美に対しての、彼女なりの敬意である。
「それじゃあ、始めようか」
「はい」
◇ ◇ ◇
「あんたは今回が初めての弾幕ごっこだから、まずは私からいくね」
そうメディスンは宣言した。それはまがりなりにも弾幕ごっこの先輩として手本を示す意気込みからであった。
「コンパロー、コンパロー、毒よ集まれ」
「?」
突然謎の言葉を発したメディスンに対して、勇美は首を傾げてしまう。
「それ、何かのおまじない?」
当然勇美は聞いてしまう。
「うん、私が毒を集める時の呪文みたいなものだよ」
「そうなんだ〜」
メディスンに言われて勇美は納得する。
「別にこの呪文を唱えなくても毒を集める事は出来るんだけどね」
その言葉が引き金となって、辺りの空気は一瞬止まった。その後勇美はギャグ漫画よろしく盛大にずっこけたのだ。その際スカートの中身が見える事はなかったのは不幸中の幸いである。
「堂々と言い切ったわね、このゴスロリ人形……」
さすがの依姫も、この発言には頭を抱えるしかなかった。
「って八意様、知っていたのでしょう?」
「ええ、もちろん。あの子とは友人同士だからねぇ〜」
あっけらかんとそう答える師に対しても、依姫は再び頭を抱えるしかなかったのだった。
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