第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第5話 毒VS鋼:前編
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そして、先程はしたなくずっこけた勇美は、起き上がるとメディスンに目を向けた。
その表情はどこか清々しいものであった。何を思っての事だろう。
「うん、メディスンちゃん。その気持ち私にもわかる! 私も意味なくても前口上とか言いたくなるもの!」
それは共感の眼差しであったようだ。考えてみれば勇美は丁度14歳である。『そういう事』を衝動的にやらないと気が済まない年頃なのだ。
それを聞いて、依姫は三度頭を抱えた。──どうして自分の周りにはそのような者達が集まって来るのだろうと。
隣にいる永琳は絵に描いたような天才故に、常人とは掛け離れた感性の持ち主であり、姉は姉でいつも桃ばかり追い回している体たらくである。
そして今、自分が見初めた者やその対戦相手までもおかしい所があったのだ。もっとまともな者が側にいて欲しいと思うしかなかった。
「依姫様、気を取り直して下さい、私がいますから」
「ありがとう、鈴仙」
救いはあった。だが鈴仙は結果として自分の元から離れていく事を選んだのだ。無理強いは出来ない。
依姫がそのような思惑を抱いている事をよそに、切られたと思ったら再びなされた火蓋がもう一度切られる。
「毒は十分に集まったからね、じゃあ行くよ! 【毒符「憂鬱の毒」】!」
メディスンのスペル宣言が行われた。メランコリーの意味が示す憂鬱の名を冠するスペルである。
そして勇美にとって、初めて自分に向けられたスペルであった。
続いてメディスンの両手から緑色の泡のような物が吹き出してきたのだ。それが自分に対してたゆたうように迫ってきたのだ。
形だけで言えばシャボン玉に似ているだろう。だが、毒々しい色がそんな哀愁には浸らせてくれはしなかった。
「これを攻略するのが弾幕ごっこだよね」
勇美は自分に迫る危機を前にしながら呟いた。ここで立ち向かわなければ前に進めないだろう。
(どの神様の力を借りよう……)
ここで勇美は少し迷ってしまう。状況に応じた力を持つ神をすぐに選んで下ろす依姫をやはり偉大だと思いながら。
(相手が毒だから……そうだ!)
暫しの迷いはあったものの、勇美は力を借りる神が決まったようだ。
「お願いします、マーキュリー様!」
そして選び終えた神に対して呼び掛ける勇美。
──マーキュリー、それは盗賊、商業の神だが水星もしくは水銀を指す言葉でもあるのだ。
それは、水銀が毒性を持つ物質だからというのが理由であった。相手が毒なら自分も毒との関係がある神を選ぼうという、目には目をというのが勇美の思う所であった。
そして、神に呼び掛けた勇美の前に無骨な鉄の球体が顕現した。
続いてその球体がダイヤルを回すような音を立てながら変型を始めたのだ。更に粘土細工を引き伸ばしていくかのようにどんどん何かの形を作られ
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