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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十三話 気晴らし
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ァレンシュタインが苦笑を浮かべた。慰められたと気付いたか……。
『高く評価されているからと言って安心する事はできません。犯罪の無い世界等有り得ないでしょうが犯罪を見過ごす世界を作る事も許されないんです。そうでなければ皆が犯罪に走りますよ、その方が楽なんですから』
「確かに、そうだな」
怒ったような口調だ。やはり気付いたか。
『但し、そうなった時は酷い人間不信が社会に蔓延します。人を見たら泥棒と思え、ですね。誰も信じられないし誰も幸せになれない。今より酷い状況になる、不幸の極みですよ。何のために内乱を起こしてまで国政を変えようとしたのか……』
「……」
『愚痴ばかりですね、……ところで今日は?』
「先日ラートブルフ男爵と会った」
『……』
「偶然だった。向こうが気付いてな、少しの間話をした」
『……そうですか」
困惑しているな、どう話をしてよいか判断出来ないらしい。珍しい事も有るものだ。
「卿の下で働いていると言っていたな」
『……そうですか』
「二度目だぞ、その言葉は。他に無いのか」
ヴァレンシュタインが苦笑を浮かべた。
『そうですね。……迷惑をかけたのではありませんか』
「いや、そんなことは無い。色々と話せて楽しかった。卿の事を良い上司だと言っていたな」
『……そんな事は有りません。私はラートブルフ男爵を利用しているだけです、酷い上司ですよ』
ヴァレンシュタインは視線を逸らしている。謙遜ではない、本心から言っているようだ。非情になりきれないのだな、この男の立場としては余り良い事では無い……。もっとも私が今生きているのもこの男の甘さのお蔭だ。となれば必ずしも悪くないのかもしれない、少なくとも私にとっては悪くは無かったと素直に思える。
「ランズベルク伯の事だが、ラートブルフ男爵から聞いた。どうにもおかしな話だな」
『ええ』
「上手くもない詩を作っているだけの男だと思っていたが……」
『操りやすいのでしょう。裏に誰かが居るようです……』
面白くなさそうな口調だ。ランズベルク伯には煮え湯を飲まされているからな、無理もないか……。
「気になって調べてみた」
『……』
「そんな顔をするな。心配はいらない、大した事はしていないからな。ほんのちょっと調べただけだ、向こうに気付かれることは無い」
いかんな、ヴァレンシュタインの表情が硬い。私を巻き込みたくない、そう思っているのだろう。
「金銭面で困っている様子は無い」
『宇宙船を売ったようです。当分はお金に困らないでしょう』
「違うな、周囲にはそう言っているらしいが奴はまだ宇宙船を保持している。誰かが援助しているようだ」
『なんですって……』
「誰かが資金援助している、そう言っている」
ヴァレンシュタインの表情が険しく
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