後編 REVENGE OF SURVIVORS
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示す。
いちいち言葉など交わすまでもない、ということだ。彼らは元々、そのつもりでここまで来たのだから。
「……しかし、妙ですね。あの怪物、カイル達を狙っているというよりは……邪魔だから、こちらを排除しようとしているようにも見えます」
「邪魔だから……? どういうことなんだ、ライアン!」
「それは――ッ!?」
だが、その総力戦の最中。タイラントの挙動に違和感を覚えていたライアンの呟きに、カイルが顔を上げた瞬間。
「ぐぉああッ!」
「カイルッ!」
瞬く間に間合いを詰めてきた巨漢の拳が、引き金を引く間も無く彼を打ち据えてしまう。そして、転倒するカイルの頭を一気に踏み潰さんと、タイラントが片脚を振り上げた――その時。
「だめぇえぇえっ!」
「……ッ!?」
突如、物陰から飛び出してきた1人の少女の悲痛な叫びが、この一帯に響き渡り。
人の声になど耳を貸すはずのない、理性なき怪物が。僅かに、動きを止める。
その隙に地を転がり、M92Fを構えながら間合いを取ったカイルは――声の主の方を見遣り、目を剥いた。
「カイル! ノエルッ! 大丈夫っ!?」
「なッ……!?」
「アリシア……!? どうしてここに!」
「ご、ごめんなさい。私、どうしても2人が心配で……」
心配げな表情を浮かべながら、建物の陰から現れた少女に、カイルだけでなくノエルも瞠目する。
雪のように白い髪をボブカットに切り揃えた、その小柄な美少女の名は――アリシア・セレスティアル。
なぜかゾンビ達には見向きもされず、その一方で爬虫類のような怪物達に狙われ続けていた、不思議な少女だ。彼女も過去にカイル達に窮地を救われた身であるが――爬虫類型生物「ハンターβ」に襲われ、重傷を負っていた。
そのため、比較的安全な建物に匿っていたライアンが、手当てしていたはずなのだ。しかし、今の彼女は重傷どころか、擦り傷一つ見当たらない。
「アリシア、君は一体……ッ!?」
しかも、透き通るような碧さだった彼女の眼は、赤みを帯びた黄色に変色している。ゾンビになった過去の「患者達」とは全く違う「症状」に、ライアンが息を飲む中――タイラントの動きに、変化が現れた。
「……ッ!? こいつ、動きが!」
「まさか……狙いはアリシアだったのか!? クソッ、なんとしてもあの子に近付けさせるなッ!」
両腕で銃撃の嵐を凌ぎながら、トレンチコートの巨漢はアリシアに狙いを定め、悠然と歩み出す。
「ひっ……! カ、カイルッ、ノエルッ……!」
「アリシアッ!」
気弱な性格ながら、カイル達の身を案じ、恐怖を堪えてここまで辿り着いた少女は――自分に迫ろうとしている巨大な「暴君」を前に、声にならない悲鳴を上げていた
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