前編 ATTACK OF TYRANT
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1998年、9月下旬。
猛火に包まれ、阿鼻叫喚の煉獄と化した街に、銃声が轟く。理性なき暴徒が斃れ、人が死ぬ。今となっては、よくあることでしかない。
ラクーンシティに発生したT-ウィルスの感染による大混乱は、留まることなく拡大し続けている。もはやこの街に安全な場所などなく、今生きている人々は絶え間なく屍達の脅威に晒され続けていた。
「カイ、ル……逃、げろっ……」
「エドガーッ……!」
それは。闇夜を照らすように燃え盛る街道の中で、市民を守らんと戦い続けていたラクーン市警――R.P.D.の警官達も、例外ではない。鮮血と煤に汚れた手で横たわる同僚を抱く、カイル・グリーンホークもその1人だった。
艶やかな銀髪を靡かせる彼は、友の金髪を撫でるようにその頭を抱え、力無く声を掛ける。誰が見ても、同僚――エドガー・ロジャースはもはや、手の施しようのない状態だった。
こんな事態にさえ、なっていなければ。今頃は、晴れて自分達の後輩としてやって来るレオン・S・ケネディを、快く迎えていたはずなのに。今となってはもう、彼の安否すら分からない。
「エドガー、しっかりして! あなた、もうすぐ彼女と一緒になるって……!」
「……だからこれから、一緒になるのさ……ノエル。俺の彼女ならもう、とっくに……」
「そんなっ……!」
そんな2人の警官と行動を共にして、他の生存者達を守るために戦い続けてきた、ラクーン大学の女学生――ノエル・スプレイグ。
黒のトップスとホットパンツという大胆な格好ながら、ショートボブに切り揃えたブラウンの髪を靡かせ、亡者達と渡り合ってきた彼女だが。その活躍は、カイルとエドガーの支えがあってのもの。
愛用のM1911A1を握る白い手を震わせて、彼女はただ死にゆく仲間を看取ることしかできずにいる。
「……けどな、困ったことにこのままじゃあ、向こうでも彼女とは一緒になれねぇんだ。なぁ、カイル」
「……あぁ、分かってる」
血みどろの警官は最後の力を振り絞るように、震える拳を友の胸に当てる。ラクーン警察署から拝借してきた、S.T.A.R.S.の装備である緑色のベストを纏うカイルは、その拳を握りながら頷くと――手にしたM92Fの銃口を、エドガーの額に向けた。
それは、ただのM92Fではない。S.T.A.R.S.への入隊を希望していたカイルは、その射撃の腕をS.T.A.R.S.隊員のフォレスト・スパイヤーに見込まれていた。
その彼から餞別として預かっていたのが、今ここにある「サムライエッジ」なのだ。カイルは先の洋館事件で殉職した彼に代わり、この銃に相応しい警官になると誓っていたのである。
「……約束したんだろ、あの人と
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