第七章 決戦 広島対大阪
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問いに、治奈が代わって答えた。
「ああ、そうなんや。最初から?」
「小学五年の時から」
アサキが正直に答える。
別に隠していることでもないので。
実の親が、もうこの世にいないことなども。
その実の親から虐待を受けていたことだけは、あまり他人に話したくないことであるが(といっても以前、義母が酔って治奈に話してしまっているが)。
「小五か。すっかり物心がついてからやから、色々と窮屈やろ。……あたしは、こっちきてからの一人暮らしやから、思いのほか気楽でええで」
「え、え、ウメちゃん一人暮らしなんだ。中学生で一人暮らしって出来るの? してもいいの?」
「駄目やなんて、日本国憲法にも都道府県の条例にも、マグナカルタにも、どこにも書いてないで」
「へえ、凄いなあ。ウメちゃん、一人暮らしなんだあ。大人だなあ」
「いや、そんなことないけどな、適当にやってるだけやし。ゴミもよう出されへんくらいやし」
単純に褒められて、まんざらでもなさそうな応芽の表情である。
「ウメキチが大人でも子供でも、どうでもいいけどさあ、それより、へっとへとのカズミ様の荷物を、少し持ってやろうって奴は、いねえのかよ!」
自転車カゴにでっかい荷物山積み、背中もバカでかいリュックぎっちり、のカズミが、さすがに痺れを切らして、怒鳴り声を上げた。
「あ、ご、ごめんなさいっ。じゃ、わたしはこれっ」
「では、わたくしは残る方を」
前カゴに積まれた大きな二つのレジ袋を、アサキと正香が、それぞれ取り出して、手に提げた。
「へとへともヘチマもあらへん、チャリ降りて押せばいいところを、勝手に急坂漕ぎチャレンジしただけやろ」
応芽だけは全然優しさなど見せず、むしろ呆れたといった表情で突っ込んだ。
「やかましい、関西弁! 分かっちゃいるけど、この坂に差し掛かると、つい漕ぎたくなっちゃうんだよ」
「ますます自分の責任やろ。まあええけどね。ほなあ、行こか」
応芽は、くるり踵を返して歩き出した。
と思うと、またすぐにくるり。
「そもそもどっちや、明木の家って」
そこでこれから、応芽の歓迎会が開かれるのだ。
そのための買い出しを、カズミが一人で引き受けて、それでママチャリの前カゴとリュックに荷物がぎっちぎちだったのである。
たっぷり恩を売っとけとか、好感度上げとけとか、仲良くしておいた方がいいよ、などとみんなにいわれて、ついその気になって。
やっぱり顔を合わせれば、このように争ってしまうし、いずれにしても応芽はぜーんぜんカズミのそんな努力を感じている様子もなかったが。
いや……そうでもないか。
「昭刃、ほなそのリュックあたしが
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