第七章 決戦 広島対大阪
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行儀じゃなあい!」
指をぷるぷる震わせていたアサキは、突然、駄々こねる幼児みたいに身体を左右に振り振り暴れ始めた。
「なんかショックだああ。……かなり頑張っているのにいいいいい」
「あ、あ、あの、ごめんね、アサキちゃん。冗談、冗談じゃけえ。……とっ、溶け込んどるよ。打ち解けとるから、こがいな軽い冗談もいえるわけで……」
「そうですよ。アサキさんが頑張っているのは、見ていてよく分かっていますから」
笑顔でフォローするのは大鳥正香である。
「……あれ、ゴエにゃん、なんかいつも以上に笑顔が暗くなあい? なんかあった?」
正香の笑顔に、なにか陰りの色を読み取ったのだろうか。
幼馴染の親友である、平家成葉が尋ねた。
「いえ、別になんにもないですよ」
「ならいいけどさ。……それより、アサにゃんの話だけどさあ、ゴエにゃんのいう通りその頑張りがさあ、思い切り見えるというか、やたら主張をするから、なんていうのかなあ、よそよそしく感じるんだよねえ」
「ええーっ」
せっかく正香がフォローしてくれたというのに、成葉が正直なことをズバズバいってきたものだから、アサキの胸にはブッスリブッスリと矢が突き刺さって、立っているのもやっとというくらい、フラフラよろけてしまった。
という状態のアサキに、成葉はさらに構わず、平気で言葉を浴びせる。
「そうやって溶け込もう溶け込もうと意識してるせいなのか、アサにゃんっていつもオーバーリアクションだしさあ」
「その発言、異議ありギャハーーーーーーー!」
アサキの、奇妙な絶叫が、天王台の住宅街に轟いた。
オーバーリアクションは生まれつきだあっ、と指をピッと突き出し主張しようとして、うっかり電柱を思い切り突いてしまったのだ。
ぐぐ
あまりの激痛に、
「いだいよおおおおお。指がああああ。ぐうううううう」
指を押さえて屈み込んでしまった。
なんだかみっともない光景である。
涙目で必死に痛みをこらえているアサキの背中を、慶賀応芽がポンポンと優しく叩いた。優しくといっても、別に慰めるつもりではないようだが。
「あんなあ、気を悪くしないで欲しいんやけどな、ちょっと疑問に思ったんで聞いとくな。……自分ち、両親もバカやろ」
ピコーン。
本日の毒舌カウントプラスワン。
「くううう、いったああああ……。実の親はね、たぶん……娘が、こんなだし」
おバカが遺伝というならば、応芽のいう通りなのだろう。
アサキは、まだ痛そうに指を押さえたまま、立ち上がると、涙と鼻水でみっともなくなっている顔で、恥ずかしそうにえへへっと笑った。
「ん? なんや、実のって?」
「ああ、アサキちゃんな、義理の両親に育てられとるんよ」
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