第七章 決戦 広島対大阪
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など関係ない。坂があるから登る。そんな顔だ。
「買い物、お疲れさん」
治奈は近寄りながら、カズミの自転車に、まじまじとした視線を向けた。
「よくやるけえね、こがいな坂を。ただのママチャリじゃろ」
なにか細工でもしていないか、とフレームやタイヤをこんこん叩いたり触ったりしてみるが、種も仕掛けもないようだ。
「なんてことねえよ。あたしは強虫ペダルだからな」
サドルにまたがったまま、得意がって胸を張るカズミ。
「ねえ、強虫ペダルってなあに?」
アサキが、疑問符ステッカーをぺたぺた貼り付けた真顔を、ぐぐぐーっとカズミへと寄せた。
「うるせえな、なんとなくいってみただけの言葉にいちいち食い付いてくんなよ!」
ズガーーッ、と頬へめり込むカズミの鉄拳。
鬱陶しさに切れたのだろう。
「あいたあっ! わ、わたし殴られるようなこといいましたかあ?」
アサキは、ほっぺた押さえて泣きそうな不服そうな表情である。
「もうその顔自体が殴ってくださいって顔なんだよ」
「どんな顔だーーーっ!」
理不尽暴論に納得いかず、アサキは抗議の雄叫び張り上げる。
「そんな顔やな」
いつの間にか横に立っていた慶賀応芽が、涙目アサキの小さな鼻をちょこんとつっつくと、わははと笑った。
「そうそうその顔……って、関西系嫌味キャラの分際で、さりげなく溶け込んでくんじゃねえよお!」
「なんやあ? 嫌味キャラあ?」
アサキを挟んで、またやり合いを始める二人。
「どう考えても嫌味キャラだろが、初対面の時から、無駄な毒舌ばかりぶちまけてんじゃねえかよ」
「気を遣うてだいぶオブラートに包んどるわ」
「凄まじく品質の悪いオブラートだな」
「まあまあ、カズミちゃん。今日は、ウメちゃんのための日なんじゃからっ。こらえてこらえて」
治奈が仲裁に入り、カズミの肩をやさしく叩いた。
一人だけ我慢を強いられたと思ったか、カズミは不満げな顔で、ぐぬぬっと言葉を飲み込んだ。
それを見てスッとしたか、それとも持ち越さない性格なのか、応芽はもうケロリと澄ました顔である。
「でもさあ、さりげなく溶け込んでるってのはホントだよねー。いつの間にか、いて当然になってるもんねー」
と、平家成葉が不思議そうな楽しそうなといった顔だ。
「ほうじゃのう。紆余曲折はあったにせよ。……アサキちゃんなんか、いまだに他人行儀でよそよそしいとこあるけえね」
治奈は突然、やばっという表情になって、慌てて、手で口を塞いだ。
もう全部喋ってしまった後なので、そんなタイミングで塞いだところで意味がないのだが。
「えーーーーっ。そんなことないよおーーっ。他人
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